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中国高校生だより

【第15期帰国作文】「桃源郷の雪」李青陽(北海道)

日付:2024.09.13

15期生  李 青陽

とわの森三愛高等学校(北海道)/東北育才外国語学校(遼寧省)

 

 一年前のある夜、教科書を閉じた時、ふと桃源郷に隠居したいという妙な気持ちになった。桃源郷は農耕文化のユートピアで、21世紀の強欲や焦りもなく、戦火や環境汚染もない。畑も肥えるし、人々ものどかな生活を送っている理想的な存在だ。北海道で桃源郷の影を見つけるとは当時思わなかったが、10ヶ月の留学生活を通して、雪の舞い落ちている桃源郷が心に浮かんできた。

  それでは、「桃源郷記」という漢文の抜粋を引用しながら、北海道の印象を振り返ってみよう。

 

復タ行クコト数十歩、豁然トシテ開朗ナリ。土地平曠ニシテ、屋舍儼然タリ。

復(ま)た行くこと数十歩、豁然(かつぜん)として開(かい)朗(ろう)なり。土地平曠(へいこう)にして、屋舎(おくしゃ)儼(げん)然(ぜん)たり。

 さらに数十歩行くと、急に目の前が開けて明るくなった。土地は平らに開けて、建物はきちんと並んでいる。

有二リ良田・美池・桑竹之属一。阡陌交ハリ通ジ、鷄犬相聞コユ。

良(りょう)田(でん)・美(び)池(ち)・桑(そう)竹(ちく)の属(ぞく)有(あ)り。阡陌(せんぱく)交(まじ)はり通(つう)じ、鶏(けい)犬(けん)相(あい)聞(き)こゆ。

 良い田畑・美しい池・桑や竹のたぐいがある。田畑のあぜ道が縦横に通じ、鶏や犬の鳴き声があちこちから聞こえる。

 東京から江別に来ると、まさに「開けて明るくなった」のだ。広い田野もあれば、深い原始林もあり、緑が溢れた。都会で生まれたわたしは、野生の鹿や狐をはじめて見た時、大変驚いた。雪に覆われた丘が素晴らしいスキー場となった時、スキー遠足を楽しんだ。桜が咲き乱れた時、美瑛へ出かけて花見を体験した。北海道の森と畑は静かで広大で、桃源郷と似ていると感じた。

 

 周りの日本人は老若男女を問わず、いつもニコニコしている。日本人の高校生も中国に対して好奇心に満ちていて、挨拶したり、おもしろい質問をしたりする。三国志から一人っ子政策に至るまで、当たり前と思っていた中国を自分がまだよくわかっていないのに気づいた一方、日本の本当の様子も分かってきた。

このような質問と回答のやり取りが、相互理解に導く道だと思う。お世話になった友達、先生、ホストファミリーの皆さんに感謝します!

 会話だけではなく、日本のお祭りや学校行事も体験した。クリスマスのお菓子作り、お正月の初詣、雪祭りの氷彫刻、ひな祭りの人形、それから沖縄への修学旅行、音楽部の発表会、強歩遠足、学校祭このような初めての体験は一生忘れがたい思い出になった。和やかで自由なライフスタイルを象徴する桃源郷は、私の留学生活のようだ。新しい景色や風習を味わって、異文化体験して、バイオリンやピアノを弾いて、好きな本を読んで今日は昨日の繰り返しではなく、新しいサプライズなのだ。なぜかというと、心のままにできるからだ。

 青春は一度きりなので、もう一度日本へ戻っても、この10ヶ月の気持ちを取り戻すことができない。つまり、桃源郷に帰ることができないのだ。だが、桃源郷を探すかわりに、自分で桃源郷を築くことにした。桃源郷の核心は他人との友愛、自然との調和であり、これには国境や文化の壁を越えて心を繫がなければならない。だから、好奇心や柔軟な考え方を持って、文化交流を続けたい。

 北海道の雪は、いつまでも私の心の桃源郷に舞い続けていくでしょう。

中国高校生だより」では、「心連心:中国高校生長期招へい事業」で招へい中の15期生によるエッセイなどを掲載しています。

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