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留学ドキュメンタリー

留学ドキュメンタリー 第4話 =苦手を挑戦の機会に=

  第4話の主人公は、上海からやってきた蔡蘊多(さい うんた)さん。ユニークなカリキュラムを持つ岐阜県立岐阜総合学園高等学校での留学生活は、思わぬ縁にも恵まれたようで順調なスタートを切った模様だ。

多様な友人関係 を育んで



年明けのHRで書初めを体験。「今年は英語をがんばりたい。それに優れているという意味の『英』という文字を選びました」

  蔡さんの在籍する岐阜県立岐阜総合学園高等学校では、大学の授業のように生徒1人ひとりが、各自オリジナルの時間割に従って授業を受けるユニークな高校だ。そのため教科ごとにクラスメートの顔ぶれががらりと変わってしまうため、蔡さんはうまく馴染めるかどうか当初は非常に不安だったそうだ。しかし留学生担当の松田先生は、このシステムが友人作りにプラスに働く面が大きいようだと話す。

  「教科ごとにクラスメートの顔ぶれが変わることで、いろんなクラスの子と仲良くなれる。これは留学生のみに限らず、一般の日本人の生徒にも当てはまっていると思います」

  人間関係が固定化されないので、通常女子高校生にありがちなグループ的なつながりがゆるいものだったり、社交性や積極性が身につく面があるのだろう。

  11月には生徒会のメンバーが、「蔡さんと一緒に盛り上がろう」という会を企画。毎回留学生が来るたびに、生徒会が誰でも参加自由として放課後に開催しているそうだ。今回は全校から30名ほどの生徒が集まり、お好み焼きやたこ焼きを作って食べ、その後蔡さんがパワーポイントを使って「中国の高校生の生活」について紹介した。

  「中国の高校生の生活を紹介したら、『大変ですね』という感想が返ってきました(笑)。皆とても優しいですね。中国の両親も勉強のことより私に友達ができないことを心配していたようですが、いっぱいできました」

  友人達とは度々名古屋などへショッピングに出かけている。一緒に連れ立つ友人の顔ぶれは、毎回違う。多様な友人関係を蔡さんも育んでいるようだ。

一番好きな時間


  様々なクラスで出来た友人に加え、部活で出来た友人とも絆を深めている。蔡さんが入部したのは茶華道部だ。

  「茶道は複雑だけど優雅だなって感じます。すごく豊かな時間を過ごしている気がして、今一番好きな時間です」


冬休み明け最初のお手前の練習に、緊張!

  10月の学園祭ではお運び役を担い、今年の6月には締めくくりとしてお世話になった先生を招き、一人でお手前を披露する場を部活の先生が計画してくれている。

  あまり騒がしい場が好きではない、だから茶道の時間が好き、と言いつつも、同じ部活メンバーの坂井田さんが、「先日、2年生全員でカラオケに行ったんですよ。蔡ちゃんもアニメソングなど何曲か歌ったんですが、すごく上手でびっくりしました」と教えてくれた。

  坂井田さんは、自転車が乗れなかった蔡さんのために、自宅まで来てくれて自転車の練習に付き合ってくれたことがある。他にもホストファザーの心遣いもあり、1ヶ月ほどで自転車に乗れるようになり、今では登下校時や周辺へのちょっとしたお出かけにも欠かせない。さりげなく手を差し伸べてくれる周りに恵まれているのだな、と感じられた。

思わぬ縁に恵まれて



ホストファミリーとその友人家族と一緒にイルミネーションを見に出かけた先で

  蔡さんがお世話になっているホストファミリー、近本さん宅には2人姉妹がおり、姉の由里子さんは上海の大学へ留学中、妹の佳名子さんも近々同じ上海に留学予定だ。

  「娘が受けている中国語の授業でホストファミリーを募集していたので手を挙げてみたんです。うちの娘もニュージーランドの短期留学でホストファミリーのお世話になったこともありましたし。蔡ちゃんが上海出身ということでびっくりしましたね。縁だなぁ、って」

  蔡さんが近本家に到着した際には、ちょうど夏休み中で由里子さんが帰省していたので、携帯のwifiの設定を行うなど、蔡さんが快適に過ごせるよう気を配ってくれたそうだ。また、姉の由里子さんの上海での住まいは、蔡さんの実家から15分ほどの距離だったことも分かり、由里子さんは中国に戻った後、蔡さんの実家で食事を招かれるなど、中国でも交流を深めている。その際「何かあったら私たちに任せてね」と、蔡さんのご両親から言葉をかけてもらったようだ。

  本当に縁があったとしか思えないような環境に恵まれた蔡さん。先月から蔡さんのお母さんも中国で日本語の勉強を始めたそうだ。

苦手を克服する努力家



登下校はもちろん、コンビニにも100均にもこれでスイスイお出かけ。

  順風万帆にも見える蔡さんの留学生活だが、やはり異国の地で慣れない事も最初は多かった。ホストの家で飼われているペットの犬が苦手だったり、中国では冷めたものを食べる習慣がないので、お弁当のご飯を食べるのが大変だったり。そんな蔡さんについて、前述の松田先生はこう話す。

  「蔡さんは16歳にしてはしっかりしているなと感じています。苦手なものがあっても、少しずつ克服してきている。会った印象はおっとりしていますけど、根性はあると思いますよ」

  同じく担任の角田先生も

  「授業で分からない事があっても、家庭で自分で調べて出来るようにしてくる。よく努力してるなと感心しますね」

  蔡さんが淡々と乗り越えてきた壁は、彼女自身が挑戦の機会に置き換えてきた。そこからは、苦手から決して逃げずに物事を受け止める肝の太ささえも感じられる。愚痴を言うくらいだったら苦手を成長の機会と捉えて少しずつ克服していこうと。

  「実は運動が苦手で、だから部活も運動部ではなくて茶華道部を選んだんです。でも今度2月にマラソン大会があって、12.5キロを2時間以内に走るんです。できなかったら追走になるので、絶対がんばります」

  苦手を克服し、それを積み重ねていくといつかそれは自信へとつながる。「自立するための留学です」と話す蔡さんは、今着実に1歩ずつ目標へと向かって歩いている。(文責:真崎直子)

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