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飴の温かさを持ちたい石
盧 聖苗(山東師範大学)

あたしは飴であった。

生き生きと温かい飴だった。他の飴と同じように棚に置かれていた。ある日、綺麗な手があたしの体を掠めてきた時、風の力を借りてあたしの袂が揺られた。それで気に入られたかも、その手にポケットに入れられ、すごくうれしかった。彼を喜ばせるために、あたし毎日衣装を変えていた。月曜日、棒付きキャンデーになり、火曜日、グミになった。水曜日、ヌガーになった…毎日、生き生きと温かい飴であった。来る日も来る日もあたしの手を暖かめていた。犬うんこ飴になったにも関わらず、心は依然として柔らかった。

しかし、10個のあたしが覆えるその手は気まぐれだった。彼は時にあたしを掌中の珠として大切したり、時にあたしを部屋の隅に投げ捨てたりしていた。皮を触れてそういった「なんとみっともない」。あたしを手に入れたのは嫌そうな様子で、またぶらぶらしてスーパーへ別の飴を買いに行った。あたしは彼のポケットにいたずらのように跳ねると、道端に素っ気なく投げ捨てられた。心のどこかなにか砕けた。

痛かった。跳ねられなかった。笑えなかった。毎日泣いていた。雨に降られたり、風に吹かれたりして、泣くたびに、心がだんだん硬くなった。泣けなかった、涙がなくなった時に、もう石になった。

僕は石である。

生まれてからもう十年、数十年、数百年経っている。時間という概念は僕にとって、ただ青空の上に動いていた曇、身の回りになにかを運んでいたアリ、黄色と緑が入れ替わった傍、それに移り変わった四季、それだけだ。

そんなにつまらない日がずっと続くと思っていたのに。

アリが緩かに歩いた普通の日で、またある手が近寄ってきた。綺麗な手だと思ったら、その手は僕の体を掠めた、この瞬間、昔のことが全部思い出された。あたしは飴だった。生き生きと温かい飴であった。

その手は僕の硬くて粗い表面を優しく撫でてくれた。

どうしよう。慌てて心のどこか柔らかくなる気がした。石に化した心が崩れ落ちそうだった。あたしの心が絶えずに泣いており、中身はまた飴に変わった。その硬くて粗い表面だけ、鎧のままだった。

あたしは石の飴になっている。中身は飴、表面は石だ。

依然として心の底から愛を信じているけれども、硬い表面で示さざるをえない。

風の力を借りて、その綺麗な手に飛び込んでいた。

あたしをどこかに連れて行ってくれるのか。不安だけど、もう怖くない。

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