飴の視点での語りが不思議でありながら切実で、心を揺さぶられました。あえて人称が変えられていたり、表現を工夫しようとする様子が見られたりする点も意欲的で、詩的なおもしろさも感じます。短い中でも深みがあり、余韻が長く残る素晴らしい作品でした。

何を言ってもネタバレになるため、まずはぜひ作品をお読みいただきたいのですが、ある存在を先輩に見立てるというアイデア、そしてその先輩の描写がお見事でした。情報の明かし方も巧みで、仕掛けが分かった瞬間に心地よく世界が反転します。完成度のとても高い一作でした。