日中国交正常化50周年記念事業
ショートショート創作コンテスト
わたしは、ある雑貨屋で不思議なトラの置き物をみつけた。そのトラと見ていると、つねに表情を変えて、あちこちを見渡している。
モジャモジャ髭を生やして、丸メガネをしている店長に聞いてみるとこう答えた。
「このトラの置き物はねぇ、毎日目標を立てて、お供えものをすると、その人にいろいろなチャンスを教えてくれる、不思議なトラなんじゃよ」
「虎視眈々っていう言葉があるだろ、このトラに自分の大きな目標を伝えて、お肉をお供えすると、恋愛とか、投資とか、テストに出そうな問題とか、いろいろなチャンスをなんでも暗示してくれるのさ」と、その店長はとてもおすすめの品のように話してくれた。
わたしが使い方を聞くと、また店長が話してくれた。
「トラがいいチャンスだと思うと、まるで、獲物を狙うかのように、目を大きくして、しゃがみ込む。その姿をみたら迷わずそれをやることだ」
「でも気を付けないといけないこともあるんだ」と店長が言った。
私が「それはなんですか?」と聞くと
「チャンスをものにするには準備が必要なんだ。願い事だけして、何もしないでいると、このトラは首だけ振る、張り子の虎になってしまうのさ」
ある日突然トラが私のほうを睨んだんだ。わたしを獲物のようにね。
それ以来、私は生やしていた無精ひげを剃そったら、1年後に君が読んでいるこの文を書いた小説家になれたのさ。