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参加者インタビュー

Interviewインタビュー 「心連心:中国高校生長期招へい事業」第15期生 帰国前報告会&歓送レセプションレポート【後編】

Vol.72 『10か月の留学を経て考えたそれぞれの「心連心」』

レセプションの模様をレポートするともに、10か月のプログラムを終えた留学生3人にインタビュー

帰国前報告会を終えた後、同じホテルの別会場で開催された「心連心:中国高校生招へい事業」第15期生帰国前歓送レセプションの模様をレポートします。

前編に続き、後編をお届けします。【前編】『日本で経験したことは、一生涯の宝物』

緊張の面持ちで登場した帰国前報告会の時とはうって変わり、和やかな表情でレセプション会場に姿を表した第15期生たち。来賓の方々に挨拶をしている中、レセプションが始まる。

まずは、国際交流基金・国際対話部長の山本雅子(氏)より主催者開会挨拶。

「この1年間で皆さんが日本で培われた友情や体験は、これからの日中関係を育む上での大きな希望だと思っています。明日、それぞれのおうちに帰りられましたら、ご家族の皆さんやお友だちに日本での経験をぜひたくさん伝えていってください。そして、これからも日中の交流の担い手として、日中交流を広げていっていただければと思います」

山本部長はこう話した後、すべての関係者の方々に感謝の意を伝え、スピーチを終えた。

その後、駐日中国大使館教育処・公使参事官(教育)・杜柯偉氏の来賓ご挨拶へと移る。

杜公使参事官は、15期生たちの10か月の活動に思いを寄せ、「楽しかったこと、寂しかったことも、一生忘れられない記憶であると同時に、それぞれの将来に極めて重要な経歴でもあるに違いない」と語る。

そして「中国に帰ったら、10か月の経験を生かして大いに成長してほしい」と述べた。

この心連心プログラムについては「長い目で見れば、青少年交流は両国関係の安定と長期的発展を促進するための良策」として、中日両国の教育協力と青少年交流を推進していく方針を語った。

乾杯の音頭をとったのは外務省大臣官房・文化交流海外広報課・課長の鈴木律子氏。

鈴木氏は10か月前に来日したばかりの15期生の姿を思い出しつつ、背丈が伸び、表情も大人になっていて成長が感じられると感想を述べた。

「皆さんのような若い人材が架け橋となって、日中2国間の絆が強まり、両国関係を支えていただくことを心より願っております」と伝えた後、乾杯となった。

それから会場で歓談中の15期生のうち3人にインタビューを行った。

10か月を振り返って――孫瀾歌さんの話

北海道で留学生活を送った孫瀾歌さんは、中国でも寒い地域で知られる瀋陽の出身。北海道の方が温かいと感じたという孫瀾歌さんだが、それでも雪の美しさと食べ物のおいしさは格別だったと話す。

――帰国を明日に控えて、今、どのようなお気持ちですか?

両親のもとに帰る喜びもありますが、今は日本の友だちや先生たちと別れる寂しさのほうが勝っています。

――10か月の中で苦しかったことは?

私は運動が苦手なので、体育の授業が苦しかったです。冬にスキーで周囲を散策する授業は大変でした。でも、クラスメイトが助けてくれて最後までやり遂げられました。以前の私は、苦手なことはしようとしませんでしたが、この体育の経験を通じて、どんなことも勇気を出してやってみようという気持ちが生まれました。

――留学期間にやり遂げたことは?

勉強は頑張りました。模試試験で歴史と英語の2科目で1位をとることができました。もともと得意科目だったので、日本の生徒に負けないぞという気持ちで励んだのがよかったと思います。

――日本での印象的な出来事を教えてください。

国際交流という部活が印象に残っています。私が留学した高校にはアメリカ、イタリア、インドネシアなどからの留学生もいて、部活を通じて日本人だけではなく、他国の人たちとも交流ができたことがいい経験になりました。

――来日する前と10か月日本で生活した今とで、日本の印象は変わりましたか。

日本に来る前は、日本の大人はみんな、“堅い”人たちだと思っていました。でも、けっしてそのようなことはなく、柔らかい人も多いことがわかりました。実際に来てみて、心の交流ができたことで、本当のことがわかったことはたくさんありました。

――中国に帰ったら何をしたいですか?

大学受験のための勉強です。今回の経験を通じて、日本の大学に来たいという思いがより強くなりました。しっかり勉強して東京大学で経済や金融を学びたいと思っています。

10か月を振り返って――王子芸さん

帰国報告会でも発表を行った王子芸さんは、アニメをきっかけに日本に興味を持ったという。

アニメを通して知った日本と、実際の日本の違いも感じた。発表会では伝えきれなかった気持ちを聞いた。

――10か月の留学期間を終えて今、どのようなお気持ちですか?

心連心のプログラムに参加できて、本当に幸せだと感じています。日本語も上達しましたし、日本の友だちもたくさんできました。また剣道という、日本の伝統文化にも触れ、その素晴らしさを知りました。

――留学期間中に一番成長できたことは?

自律性だと思います。中国では勉強以外のことは母がやってくれました。でも日本では何でも自分でやらなければなりません。学校に行く用意をしたり、荷物をまとめるのもすべて一人でやれるようになりました。少し大人に近づけたかなと思います。

――来日して、日本の印象が変わったことは?

私は以前から日本のアニメが好きなのですが、中国では私のまわりでアニメが好きな人は少ないです。でも、日本では多くの人がアニメに親しんでいることがわかりました。一番驚いたのは学校の先生もアニメをよく見ていることです。中国では大人がアニメを見ることはほとんどないので意外でした。

――留学期間を終えて、将来の進路に影響はありましたか?

来日前から医者になりたいと思っていました。今回、日本の高校で習った生物の授業が感動するほど面白くて、医学に進みたい気持ちがより強くなりました。そして、医学を学ぶなら、中国より日本の大学で学びたいと思っています。

――この10か月で楽しかったことは?

多くの友だちと交流ができたことです。特に、日本と中国の文化の違いなどを友だちと話せたことは有意義でした。交流の中では多くの日本の友だちが、中国に行きたいと言ってくれたので、将来、本当に来てくれた時は、心連心の目標が叶う時だと思います。

10か月を振り返って――劉斯恬さん

埼玉県で留学生活を送った劉斯恬さんは、ホームステイをしながら勉強重視の生活を送りつつも、中国にいる時よりも多く、友だちと遊ぶことができたという。週末に東京の渋谷や新宿、原宿に出かけることあった。遊びを通じて、日本の文化に触れることができたと振り返る。

――留学期間で困ったことはありましたか?

困ったことは通学です。重いリュックを背負って毎日、バスと電車を使って1時間、通うのは大変でした。常に時刻表を見ながら学校生活を送っていたような印象です。私より遠いところから通っているクラスメイトもいたので、私も頑張りました。

――日本で生活をしたことで気づいたことは?

日本人の思いやりの心です。日本人は常にまわりの人のことを考えて、理解しようとしていると感じました。そして他人に迷惑をかけないように、自分のことは自分でやるということを大事にしているため、自己解決能力が高いと感じました。

――10か月の留学生活を経て、将来進みたい道などは見えてきましたか?

以前から日本の大学で学びたいと思っていましたが、その気持ちに変わりはありません。ただ、日本の大学に来た時は、欧米など日本以外の国の文化にも触れたいと思っています。それも心連心プログラムを通じて異国の文化に溶け込むという、素晴らしい体験ができたからです。大学では経済を学びたいと思っていますが、世界の文化に触れることで、いずれは国連など、世界の平和に貢献できるような仕事をしたいと思っています。

――心連心のプログラムについて今、感じていることを教えてください。

心連心は私にとって本当に貴重な宝物です。15期生は9名と人数は多くないものの、私たち一人ひとりが日本の文化や本当の姿を伝えていきたいと思っています。

突然のサプライズ企画

レセプションの途中、予定にはなかったサプライズ企画が! なんと埼玉県内の高校で留学生活を送っていた劉斯恬さんのクラスメイトと、東京都内の高校で留学生活を送っていた王嘉隆くんの先生とクラスメートが会場に駆けつけ、一人ずつ帰国する留学生にエールの言葉を贈った。

別れを惜しむクラスメートの言葉を受け、劉斯恬さん、王嘉隆くんも、クラスメイトにお礼をいう心温まるシーンに涙を浮かべる人たちも見られた。

最後に、招へい生代表挨拶を行ったのは朱語晨さん。

まず、自らの留学先だった鹿児島の自然の豊かさや、歴史のすばらしさに触れた。そして学校生活では自らが病気になった時に先生がすぐに病院に連れて行ってくれたことや、国際郵便の荷物を送る際にも先生が丁寧に教えてくれたエピソード、そしてホストファミリーとの思い出を伝えた。そして辛い時にはクラスメートが精神的にサポートしてくれたと、感謝の意を述べた。

「この10か月間、私は見たことのない多くの風景を見て、さまざまな人に出会いました。この記憶は私にとってこの世でもっとも尊い宝です。私はこのことを心の支えにして、力強く歩いていきたいと思います。ありがとうございました」と述べて挨拶を終えた。

その後、15期生から関係者の方々への感謝の意を込めて、歌のプレゼントが贈られた。

15期生全員が会場の前に集まり、ゆずの『栄光の架け橋』を熱唱。感動の拍手とともに歓送レセプションは閉会した。


取材・文:大島 七々三 取材日:2024年 7月16日

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