参加者インタビュー
Interviewインタビュー 日中21世紀交流事業に参加された方々に交流を振り返っていただきました
勉強もクラブ活動も全力で
北海道の立命館慶祥高等学校に通う第十期生の楊晶智君(遼寧省瀋陽市出身)。来日間もない10月に取材に訪れたとき(第3話)は、日々新しいものに出会うことを楽しんでいた楊君だが、日本の生活も8カ月目となったいま、どんな生活を送っているのだろうか。新学期が始まったばかりの高校を再び訪ねた。
3年生に進級
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写真を拡大制服姿もすっかり板についた。
楊君が所属するのは難関大学を目指す「SPクラス」。昨年のクラスの生徒がそのまま持ち上がりで3年生になった。いよいよ受験モードに突入し、教室には緊張感が漂う。楊君によると、休み時間のおしゃべりも受験の話題が中心になってきたという。
このクラスでは、数学の授業は通常のカリキュラムより前倒しで進められ、3年生になると受験対策に集中する。通常は3年生で履修する「数学Ⅲ」を2年生で習うのだが、2年生の途中から入った楊君にはついていくのが大変だった。しかし、もともと数学は好きな科目。「特に積分が難しい」と言いながらも毎日コツコツと自習を続け、みんなに追いつくことができた。
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写真を拡大クラスメートは受験モードに突入。
努力家の楊君に、同級生も賛辞を惜しまない。村松魁理君は「勉強がよくできてすごい。日本語ももともとうまかったけれど、さらに上手になった」と舌を巻く。
長期休みを満喫
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写真を拡大部屋で自習。「数学と日本語をがんばっています」
楊君は普段は寮で生活するが、冬休みや春休みなど、長めの休みの時にはホストファミリーの大川章さん・祐さん夫妻の家に滞在している。祐さんによると、初めは口数が少なくて心配したこともあったが、最近はいろいろな話をするようになったという。「居間に教科書を持ってきて勉強していました。中国の高校生は日本の高校生よりしっかりしていますね。楊君もわがままを言わず、大人っぽいところがあります」と祐さん。
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写真を拡大ホストファミリーの大川さん夫妻と。(楊晶智君提供)
大川さん夫妻とはスキーやボウリング、近郊の観光地にも出かけた。北海道のパウダースノーで得意のスキーを楽しみ、さっぽろ雪まつりや小樽では大勢の中国人観光客に驚いた。お気に入りの札幌グルメは「辛みそ味」のラーメンだ。
さらには北海道を飛び出して本州にも行ってみた。3月末に友だちと東京、名古屋、京都を回ったのだ。有名大学も見学し、日本の大学進学の夢を実現する決意を新たにしたようだ。
寮ではしっかり勉強
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写真を拡大68人が生活する男子寮。
楊君は男子寮からバスと鉄道を乗り継いで高校に通う。寮は住宅街の中にあり、1年生から3年生まで68人が生活する。一人部屋なので気楽だが、勉強にもしっかり取り組んでいる。生徒たちの母親代わりを務めて9年目になる寮母の小山田紀子さんは「楊君は自分で計画して自分のペースで生活するタイプ」と、温かい目を向ける。
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写真を拡大寮の食堂。「なんでもおいしい。でもトマトはちょっと苦手」
このように周囲からは優等生と見られている楊君だが、「日本の高校は自由で楽しい。あまり帰りたくない」と本音ものぞかせた。もちろん立命館慶祥高校は、多くの卒業生を難関大学に送り出しているだけあり、学習指導はきめ細かく行っている。だが同時に、海外研修やクラブ活動などの場で、生徒が主体的に考えて行動することを後押ししている。そうした自主性と自律性を育てる校風が、中国で勉強漬けの学校生活を送っていたという楊君の目には新鮮に映るのかもしれない。
残り3カ月の日本生活
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写真を拡大同級生手作りの巨大プリンを囲んで。(楊晶智君提供)
日本で過ごす高校生活も、残すところ3カ月。帰国までに何をしたいかを尋ねると「日本語をもっと流ちょうに話せるようになりたい」という答えが返ってきた。来日時には多少苦労した聞き取りもほとんど支障はなくなったが、さらなる日本語上達への意欲は強い。バスケットボール部と並行して弁論研究部に入ったのも日本語のレベルを上げたいから。滞在中の7月に日本語能力試験(JLPT)の最上級「N1」を受験するつもりだ。
楊君のいまの願いは「10年、20年後にもみんなが僕のことを忘れないように」。残りの時間でたくさんの友だちを作り、帰国してからも中国の無料メッセージ・通話アプリ「WeChat」で連絡を取りたいと思っている。
勉強にもクラブ活動にも全力で取り組む楊君。ここでの留学生活は、一生忘れられない思い出となるに違いない。