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参加者インタビュー

Interviewインタビュー 日中21世紀交流事業に参加された方々に交流を振り返っていただきました

後悔したくない

第7話の主役は、愛知の桜丘高等学校に通う鐘冰雯(ショウ ヒョウブン)さん。前回の取材では、ホームシックに悩まされたりクラスに馴染むまでの苦労がうかがえた鐘さんだが、その苦労を乗り越えた今、どのような成長ぶりを見せてくれるか楽しみに訪れました。前回の様子はこちら

ぐっと大人っぽく

日本の桜は、留学中絶対見たかったものの一つ

前回の取材より3ヶ月。待ち合わせ場所で向こうから手を振る人影が、鐘さんだと最初なかなか分からなかった。近づいて顔を合わせると驚いた。髪を下ろしているせいか、前回会った時よりぐっと大人っぽく感じられる。思わず「かわいくなったね!」と声をかけてしまった。

最初の数ヶ月、ホームシックやクラス替えなどにより、学校生活に馴染むまで苦労が多かった鐘さん。2回目の取材をお願いする際に、「親しい友人に取材させてほしい」と頼むと、「正直にいうと、一番仲良くしている友人は中国人です」という回答が返ってきた。

それを聞いて、中高一貫コースのクラスに馴染むのに、まだ苦労しているのだろうか、と少し懸念していた。

「春休みはどうしていたの?」との問いかけに

「友達とお花見に行ったり、友達の家に泊まりに行ったり。お花見はすごい人出で驚きました」

と明るく話してくれた。友達のお父さんに有名な桜の名所に連れて行ってもらったらしい。また、月に一回は泊まりに行っているという仲の良い中国人の友人宅にも2泊ほどしたそう。彼女の家には2月の春節(中国の正月)時に自宅に招かれ、生まれて初めて血のつながりのない人と春節の卓を囲んだ、と日記に記していた。少しずつそういう機会が増えていくことが、成長の証でもあるのだろう。

留学生という意識は、もうなかった

気になるクラスでの様子はどうなのだろうか?3学期の間担任を務めた川端先生に話を聞かせてもらった。

「中学からの持ち上がりなので、1-Aはとても絆が強いクラスでした。特に3月に行われた校内の合唱コンクールで1位をとりたいとクラス全員で盛り上がっていて、鐘さんはそこに普通に馴染んでいましたよ。休日なども返上で練習に励んでいましたね。留学生という意識は、もう僕にもクラスメートにもなく、ソプラノ担当の1-Aの一員として溶け込んでいました」

2年生になっても、絆の強さは変わらぬまま

4月からもクラス替えはなく再び同じクラスメートと過ごすので、より絆が強まりそうだ。特に仲の良い生徒はいるのか聞いてみた。

「一人、留学に前から興味をもっていた生徒がいて、鐘さんは彼女ととても仲がいいですよ。彼女は鐘さんがクラスメートになってから、やはり自分も鐘さんのように留学を経験してみたい、と強く思うようになったようで、ニュージーランドへの1年間の留学を希望したんです。残念ながら選考で落ちてしまったのですが・・・」

「憧れ」だった留学を実体験している鐘さんの存在から影響を受け、自分もチャレンジしようと奮起した生徒がいた。同い年の彼女が出来るなら、自分だって、という思いもあっただろう。残念ながら選考に落ちてしまい今年度の留学は叶わなかったそうなのだが、あきらめなければきっといつか夢を叶える日は来るだろう。

大切な友人たち

仲の良い中国人の2人の生徒とは部活も同じ料理部だ。2人とも留学ではなく家庭の事情で2年ほど前に来日し、桜丘高校に転入した。その内の一人は、中国にいる時から映画や桜の写真を見たりして、日本への憧れが募っていたので、来ることになってとてもうれしかった、と話してくれた。それに日本の高校のかわいい制服にも憧れていたとか。

3人で思う存分中国語でトーク

しかし、彼女たちも最初は友達を作るのは難しかった。来日当初日本語がほとんどできなかったそうなので、友達をつくるどころかコミュニケーションをとることも難しかっただろう。今も母国語で不自由なく話せる友達というのは、やはりありがたい存在らしく、3人とも表情が、他の日本人生徒と話している時よりもリラックスしてみえた。

「今はホームシックはないけれど、やっぱり中国に帰るのはうれしい。でも帰ったら、きっと日本の友達に会いたくなるだろうなぁと思う」(鐘さん)。

他にも寮に仲のよい友達がいる。自宅が遠方で部活が忙しいために、11月より入寮した小芦さんとは、特に仲が良いそう。

「鐘さんは、何事に対しても優しい。私が人間関係で悩んでいる時に、心配して話を聞いてくれたり。一緒に買い物に出かけたり、アイスを食べに行ったりいろいろ思い出はあるけど、最後は形になるものがほしいので、プリクラを撮りに行きたいな」

と話してくれた。お互い家族と離れて暮らしているもの同士、つらい事があれば支えあっているのだろう。そこには全く国籍など関係なく、寝食を共にする寮ならではの友達の絆があるように思えた。

前ほど泣かなくなった

友人に優しく、繊細な心遣いをみせる鐘さん。反面、クラスでは”一番の泣き虫”と言われているとか。学校のレクリエーション行事で映画鑑賞をした際に感動して泣いてしまったり、自転車ツアーで交流した気仙沼の人たちの写真を見て泣いてしまったり。来日当初もホームシックになり、よく部屋で泣いていたと前回の取材時にも話していた。

料理部で、すまし汁をよそう手つきも慣れたもの

しかし今は前ほど泣かなくなった。その自信が外見にも表れ、ぐっと大人っぽくなったように感じられたのだろう。留学当初なかなかクラスに溶け込めない時も、自分から世界を広げるべく努力した。学校外では、毎月一度週末にホームステイをし、平日は寮母さんに見守られているが、常日頃気を配ってくれる親代わりのホストファミリーという存在がいない分、自立をより求められる面はあったと思う。

「今、部屋はぐちゃぐちゃ。片づけが嫌いで・・。精神的な自立はまだまだだと思う」

と謙遜するが、この半年間の経験により精神面での成長のスピードはぐんと速度を増したに違いない。

「日本に来る前に体験してみたい、と思っていたもちつきやお花見、それに部活動は体験しました。やらないで後悔するのはいや。できたらいいな、じゃなくやりたいと思っていることは全部やっておきたい」

前回の取材では「一人で何でも決めるのは苦手」、と頼りなさげに話していた鐘さんが、最後に力強くこう答えてくれた。

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