参加者インタビュー
Interviewインタビュー 日中21世紀交流事業に参加された方々に交流を振り返っていただきました
Vol.73 令和5年度第2回ふれあいの場サポーター5名による帰国報告 座談会
「言語を超えたコミュニケーションで分かり合える感動を体験」
2024年9月4日~9日までの6日間、貴陽ふれあいの場でイベントを行った5名のふれあいの場サポーターによる、サポーター活動の振り返りを行う座談会を行いました。前編ではオンラインと対面イベントの振り返りと、そこで得た貴重な経験について語り合います。
●ふれあいの場サポーターとは?
日本の大学生が中国「ふれあいの場」の大学生と共に、日本文化に関するイベント(オンライン・対面)を企画~実施までを行うプログラムです。詳しくはこちら
インタビューにご協力いただいたサポーター5名は2024年3月~7月まで3か所(ハルビン・昆明・フフホト)のふれあいの場を対象にオンライン活動を行い、9月に貴陽ふれあいの場で対面イベントを行いました。
オンライン活動報告書
貴陽ふれあいの場 対面イベント報告書
プロフィール
山口 珠生さん
大学4年生。卒業後は中国語を生かした仕事に就きたいという思いから、ふれあいの場サポーター活動に参加。オンライン活動ではフフホトふれあいの場との交流を担当。
和泉 舞桜さん
大学2年生。美術系の大学に通い、中国文化の影響を色濃く受けた琉球王朝の文化を研究中。オンライン活動では昆明ふれあいの場との交流を担当。
木村 魁さん
大学2年生。大学では英語を中心とする外国語を専攻。異文化をより深く知るためにふれあいの場サポーター活動に参加。オンライン活動では昆明ふれあいの場との交流を担当。
小野 七菜さん
大学2年生。日本の音楽、アニメ、漫画、アートなど文化全般に関心を持つ。海外の人たちにその魅力を伝えたいと、ふれあいの場サポーター活動に参加。オンライン活動ではハルビンふれあいの場との交流を担当。
富山 碧衣さん
大学2年生。大学で東アジアを専攻し中国語も学習中。卒業後は中国語を生かして日中両国に貢献する仕事に就きたいという思いから、ふれあいの場サポーター活動に参加。オンライン活動ではフフホトふれあいの場との交流を担当。
オンラインだからこそできたこと
――「ふれあいの場サポーター」活動では、まずハルビン・昆明・フフホトの3つの「中国ふれあいの場」を対象にオンライン交流イベントを毎月実施し、その後貴陽ふれあいの場に渡航してイベントを実施されました。オンラインイベントと対面イベント、それぞれ経験した印象をお聞かせください。
木村:僕は昆明ふれあいの場とオンライン交流を行ったのですが、互いの地域で一番人気のスイーツを紹介する企画が印象に残っています。僕が京都在住なので日本からは「八つ橋」のレシピを送り、中国からは「泡魯達」という雲南省のお菓子のレシピをもらいました。それをもとに双方で作って食べるという企画だったのですが、その地域ならではの食材は海外のスーパーでは扱っていないので苦戦しました。
ご存じの通り、八つ橋には独特の味わいの「ニッキ」が必要ですが、きっと中国のスーパーには「ニッキ」がないと思ったので、シナモンパウダーを調達してもらいました。また、中国側から指定された食材の「泡」に相当する食材が日本では手に入らなかったため、「タピオカ」で代用したりしました。
そのように互いに工夫しながら作って食べるというイベントでは、どちらの国でもとてもおいしく出来上がり大変盛り上がりました。こういった楽しみ方ができたのもオンラインならではだったように思います。
小野:私はハルビンふれあいの場との交流を担当したのですが、オンラインだと時間に縛られがちという印象でした。イベントではフリートークの時間が一番盛り上がっていたので、フリートークの時間をできるだけ多く取り入れたかったのですが、クイズの企画で時間がかかってしまった結果、フリートークの時間がなくなり、毎回、もっと時間が欲しかったという感想がアンケートで聞かれました。
山口:オンラインはオンラインの良さがあったと思います。顔はよく見えるし、会話で曖昧なことがあるとチャット機能を活用して伝えることができ、小グループに分かれて話し合いを行うなど、オンラインの特性を生かした企画ができました。
和泉:私の場合、オンラインでの交流イベントのほうが対面より緊張せずに喋ることができました。会話をしながら家の中の様子や、最近読んだ本をカメラにうつして画面を通じてすぐに紹介できるなど、便利さを感じました。またオンラインイベントが月に1度というペースで行われたことも、準備に時間を掛けられたという意味で、よかったと思います。
日本の当たり前を言語化する難しさ
――貴陽ふれあいの場では交流企画として「日中スポーツ大会」を実施したと伺いました。現地に赴く前の事前準備はどのように進めたのでしょうか? 苦労したことや印象に残っていることなどについて教えてください。
山口:事前準備ではまず大まかなイベント内容や準備すべきことをオンラインのミーティングで決めた後、日本側と中国側でそれぞれ準備を進めました。苦労した点は、日本側メンバーも全国バラバラの場所に住んでいるのでオンラインでのやりとりで準備を進めなければならなかったところです。私達はWeChatを使ってやりとりをしていたのですがチャットでのやり取りだけで進めるのが少し大変でした。
和泉:私は日本人どうしの意思疎通もさることながら、中国側との意思疎通も結構大変でした。たとえば現地で行う「日中スポーツ大会」のプログラムを決める際に、日本側から「鬼ごっこ」を提案したところ、「鬼」という概念が中国の人たちには理解できなくて、「鬼が走っていいの?」と聞かれて説明のしように困ったこともありましたね(笑)。最終的に鬼ごっこは採用されませんでしたが、日本で当たり前のことが言語化しづらくて、手探りしながら進めていった感じです。
木村:このプログラムは、中国の学生に日本の文化を伝えることを目的としているので、どうせなら面白いことや、外国の人にはあまり知られていないことを伝えたいと思っていました。しかし、中国の学生は日本のことをよく知っているんですよ。中国の人たちが知らない話題を見つけるのに少し苦労しました。
小野:中国側との事前のやり取りの点では、中国の学生さんの日本語のレベルもバラバラです。全体的に上級生になるほど日本語のレベルも高いので、次第に日本語が上手な上級生の意見や考えで進みがちになってしまうんです。ただでさえ初対面で緊張している中で、日本語があまり出来ない人の影が薄くなってしまいます。
私たちはより多くの人の声を取り入れたいとの思いがあったので、日本のアニメの話題で雑談するなど、何でも話しやすい雰囲気を作る工夫を行いました。PCやスマホの画面だけのやりとりだと、どうしても堅苦しくなってしまうためです。
富山:印象に残っているのは、レクリエーション系の企画を考える際、中国側から本当に多くのアイデアを出してくれたことです。しかも日本の私たちにわかりやすく説明するためにアイデアを1つずつスライドでまとめてくれました。
ずいぶん手間がかかったと思うのですが、私たちが現地に行くことをとても楽しみにしていることが伝わってきて、嬉しかったです。
言語の理解を超えた深い繋がりを感じた、対面での交流
小野:オンライン交流に対して対面イベントでは時間の制限が少なく、私たちに理解できないことがあれば中国の学生が些細なことでも粘り強く説明してくれました。日本語が得意でない人も、途中でいろいろと調べたりしながら、最後まで諦めることなく、全力で私たちに説明しようとする姿勢に心打たれました。
そのほかに、対面だとハイタッチなどもできますよね。それだけで互いの心の距離がぐっと縮まりました。表情だけでもわかり合えましたし、より密接なコミュニケ―ションが取れました。それが対面の良さだと思います。
木村:たしかにオンラインだと話題がなくなれば、「今日はこの辺で」と言って終わりにできますけど、対面だと話題がなくなっても、移動中などはずっと一緒にいるわけですよね。ただ街を歩いているだけでもメガネ屋さんで視力検査に使われるマークが、日本では「C」の形ですが、中国では「E」だということがわかって、それをテーマにトークが盛り上がるといったこともありました。
対面イベントはイベント以外の時間も一緒にいられることで、たとえば勉強や家族のことなど、オンラインの時より一歩も二歩も踏み込んだ話ができたように思います。
富山:私はオンラインだと距離感を感じてしまい、喋りづらく感じていました。以前からSNSなどで中国人の友だちとやり取りをしてきましたが、今回現地で対面してみると、初対面なのにあっという間に仲良くなることができ驚きました。なぜこんなに短時間で人と仲良くなれるんだろうと不思議なほどでした。これも対面のイベントならではの魅力だと感じました。
(後編に続く)
取材・文:大島 七々三 取材日:2024年9月10日