Interviewインタビュー 日中21世紀交流事業に参加された方々に交流を振り返っていただきました
Vol.75 心連心16期生、3か月目からのチャレンジに向けて-前編-
「心連心:中国高校生長期招へい事業」参加の16期生が来日して約3か月たった2024年12月。埼玉県の国際交流基金日本語国際センターで3か月目研修が開催され、日本各地の高校で学ぶ16期生が集合した。彼らの来日してからの暮らしぶり、留学先地域の紹介、印象に残った体験などを、研修中の個人発表とそれぞれの体験談から紹介する。
玉ねぎとの生活 ――YZさん
四川省成都市出身のYZさんは徳島県阿南市の高校に留学中だ。個人発表のタイトルは「玉ねぎとの生活」。その理由は、「朝食から夕食まで、どんな料理にも必ず玉ねぎが入っているから」だそうだ。YZさんはカレーに入っている玉ねぎが一番のお気に入りとのこと。個人発表ではこの3か月に体験した、人形浄瑠璃や藍染め、三味線などの伝統芸能の様子も紹介してくれた。
日本に来て驚いたことはありますか?
「先輩、後輩の関係にはびっくりしました。先輩にはしっかりあいさつをする、丁寧語で話す、といったことは中国にいたときは知らなかったんです」。
心連心に参加して、将来の夢は変わりましたか?
「以前はスポーツ医学分野の仕事に興味があったのですが、このプログラムに参加してちょっと変化がありました。今は作家に興味があります。いろいろな考えがあると知ったので、それを書きたいです」。


焦らず、欲張らず、あきらめず ――ZYさん
上海市出身のZYさんは岩手県盛岡市に留学中。寮の食事はとてもおいしく、3か月間、同じメニューだったことは一度もないほどバラエティーに富んでいるのだそうだ。盛岡名物のじゃじゃ麺も寮の食事で食べたと言う。
友達を作るのに苦労はありましたか?
「はい、最初は何を話せばいいかな、相手から話しかけてくれるかな、と悩んでいたのですが、自分から積極的に話しかけたほうがいいと途中で気づきました。それからは、一緒にお弁当を食べたり出かけたりする友達が増えました。勇気を出してよかったです」。
これからの日本での7ヶ月をどのように過ごしたいですか?
「留学が始まるとき、留学先の先生に『焦らず、欲張らず、あきらめずに留学生活を送ってください』と言われました。この言葉を胸に、充実した一年を過ごしたいです」。
人生で初めて目にした海 ――SZさん
北海道江別市に留学中のSZさんは湖北省黄岡市の出身。週末に訪れた苫小牧で生まれて初めて海を目にしたときの興奮を、波打ち際の動画を見せて語ってくれた。いろいろな国から日本に留学している学生たちとの交流イベントに参加したり、初めて両親のいない誕生日を経験したり、生まれて初めて尽くしの日々を楽しんでいるようだ。「ホームシックは?」という質問にも、笑顔で「大丈夫!」のひと言が返ってきた。
来日直後にお誕生日を迎えたのですね。
「簡単なケーキしか準備できなかったのですが、寮の同室の3人が祝ってくれて、すごく有意義な誕生日になりました」。
日本に来て、生活の何が一番変わりましたか?
「中国では1週間のうち、自由になるのは半日だけです。基本的に毎日朝の6時から夜の9時50分まで勉強です。それが日本に来てから自由な時間が増えて、ストレスがなくなりました!」
中国と日本の違いで驚いたことはありますか?
「先生と生徒の関係です。中国は先生との間に距離があるというか、気を遣う関係です。でも日本では友達との関係に似ていて、話を聞いてもらったり、悩みを相談したりしやすいです」。


自由を謳歌しながら夢に向かう ――XTさん
浙江省杭州市出身のXTさんは北海道札幌市で学んでいる。寮生活で友達が増え、充実した毎日を送っているそうだ。時々、一緒に中華料理を作るという。週末には旅行に出かけることがあり、先日は江別市に留学中のSZさんと合流して小樽に小旅行に出かけた。ヨーロッパ風の建築が並ぶ街並みが印象的だったそうだ。
日本の授業は、中国のそれとは違いますか?
「中国では、試験問題は難しいけど授業の内容はそれほど難しくないと思います。日本では授業の中に情報・知識がたくさん詰まっていて、中国であれば大学で学ぶような高度な内容もあります。そういう意味では大変ですね」。
将来の夢は化学者なんですね。
「はい、中学3年生くらいから化学が好きになって、今も時間のあるときに化学実験をしています。失敗することもあるけど、すべて自分にとってよい経験です(笑)。化学分野は日本のほうが中国より強いと思うので、日本で勉強したいと考えています。筑波大学に進学できればと思って勉強しています」。
日本で学んだ方言や若者言葉 ――ZXさん
大阪府高槻市に留学中のZXさんは、四川省成都市出身。個人発表では週末に京都に出かけたり、修学旅行で沖縄に行ったりと、アクティブな留学生活を紹介してくれた。
大阪方言は覚えられましたか?
「はい。『彼女おる?』は『彼女いる?』のことです。『あかん』は『だめ』と同じ意味です」。
そのほかに、日本でどんな言葉を学びましたか?
「『えぐい』『だるい』などは日本に来て初めて知った単語です。でもこれらは学校だけで使える言葉で、目上の人に対して使ってはいけないんですよね」。

インタビュー後編に続く
取材・文:鈴木 香織 取材日:2024年12月18日