Interviewインタビュー 日中21世紀交流事業に参加された方々に交流を振り返っていただきました
Vol.80 「ふれあいの場」代表学生インタビュー-後編-

国際交流基金では、日本の最新情報や日本人と接する機会が少ない中国の地方都市において、青少年層を主な対象に対日理解と交流を促進する「ふれあいの場」を開設しています。「ふれあいの場」では、日本の最新情報(雑誌、書籍、映像資料等)に触れる機会を提供し、さまざまな日中交流イベントが行われています。
2025年2月、「ふれあいの場」の学生を日本へ招へいする「学生代表訪日研修」を行いました。中国各地のふれあいの場を代表する10名の学生に日本、日中交流、そして「ふれあいの場」への思いを語ってもらいました。「インタビュー後編」をお届けします。
「ふれあいの場」に参加したきっかけ
――それでは「ふれあいの場」について伺います。参加したきっかけ、理由と、これまでに参加した「ふれあいの場」のイベントで印象に残っているものを教えてください。
金文杰さん(昆明): 大学に入学して、先輩たちが説明会でふれあいの場のさまざまな活動を紹介してくれたんです。日本のことを知ることができるし、面白そうなイベントがあるなと思って、参加を決めました。
龐櫻さん(桂林): 私は先輩から「勉強するのにいい場所だよ」と勧められて、いろいろなイベントが開かれるふれあいの場で日本の文化について学び、理解し、日本の学生と交流できるのは魅力的だと思いました。実際に、イベントを通して日本の友達もできました。
崔伊藍さん(広州): 1年生の時、ふれあいの場の活動に参加して、先輩たちの親しみやすさ、温かい雰囲気が大好きになって参加を決めました。特に楽しかったのは「粤談東瀛(広東と日本の語り合い)」というイベントです。日本人から見た広州の印象や、広州から日本へ留学した学生の体験などを共有し、中日両国の民間友好交流を目的としたイベントでした。
陳昕瑶さん(フフホト): 私がふれあいの場活動に参加したきっかけは、大学の新入生歓迎パーティーでした。みんなでゲームをしたりして、とても雰囲気がよくて、楽しかったんです。フフホトふれあいの場では週に1回、「日本語コーナー」という活動を行っています。10人くらいが集まって、毎回いろいろな話題について話します。
李瑶さん(アモイ): 日本文化の学習や日本語力の向上に役立つと思って参加しました。印象に残っているのは中日文化祭で、約300人が参加した大規模なイベントでした。中国の無形文化遺産の「糖画」(溶かした砂糖で絵を描くあめ細工)を紹介したり、日本の縁日文化紹介として「金魚すくい」体験を行ったりしました。
公保吉さん(西寧): 一番印象に残っているのは、今年の11月に開催した日本のお菓子作り体験イベントです。約60人が参加し、三色だんごとケーキを作りました。日本の和菓子を初めて食べましたが、おいしかったです。参加者同士の交流が深まったのもよい思い出です。
姚逸亭さん(ハルビン): ハルビンふれあいの場では春にお茶会を開催し、お茶の作り方を学びました。ちょっと苦かったので、お菓子と一緒にいただきました。お茶碗を回して飲むのが印象に残っています。
王彦凱(杭州): 私は今年の10月に開催したショートショートの書き方講座が印象に残っています。田丸雅智先生からショートショートの書き方を学びました。日本語でショートショートを書くのは初めての経験でしたが、その場で皆が発表し合い、とても面白かったです。

自分たちの「ふれあいの場」の現在地
――「ふれあいの場」ではいろいろな活動があると思いますが、それらを運営・企画するときに大切にしていることや、課題に思っていることを教えていただけますか。
龐櫻さん(桂林): イベントで大切なのは、どのようにして皆の興味を引くことができるか、どうやってより多くの学生に参加してもらえるか、ということです。そのために日本語講座だけではなく、楽しんで参加してもらえるようなイベントを考えました。例えば、演技コンクール、公園でのお花見などです。これらのイベントはうまくいきました!テーマを決めるのが一番難しくて、ふれあいの場のメンバーだけでなく、日本語学科の学生の知恵も借りながらアイデアを練っています。
李学峰さん(延辺): 延辺ふれあいの場の課題は、他のふれあいの場と比べてイベントのスケールが小さいことだと思います。参加人数が少なく、毎年同じようなイベントの繰り返しで、アイデアが足りていないと思いますね。あとは食べ物に関係したイベントをするとき、中国で手に入らない食材が結構あるんです。たこ焼き器など、調理器具が揃わないのも問題だと感じます。
陳昕瑶さん(フフホト): 難しいのは、みんなの日本語のレベルがまちまちで、日本人の学生との交流が難しい点です。そういう時はどう交流すべきかふれあいの場の先生に相談しています。
公保吉さん(西寧): 私は本の知識をクイズにしたり、参加者が本の感想を共有するような読書会を開いてみたいです。日本の本に興味はあっても、内容を理解している人は少ないように感じます。いずれにしても参加者にとって魅力的なイベントを行うことが大切だと思っています。
姚逸亭さん(ハルビン): よく知られている文化だけでなく、いろいろな文化、伝統を教え合ったり、習慣の背景にある理由を伝えたり、そうしたことを積み重ねるのが大事ですね。イベントそのものよりも、文化交流が大切です。日本人と話すのは、初めは気まずいときもありますが、興味や関心の近い人同士、少しずつ理解を深めていけたらいいと思います。

これからの活動に向けて
――今回のこの日本の研修を、これからの「ふれあいの場」の活動にどのように生かしたいですか?
王彦凱さん(杭州): 中国に戻ったら、この研修で経験したことをふれあいの場の皆に共有したいです。リアルな日本の社会を、日本に行ったことのない学生に伝えたいですね。
李学峰さん(延辺): 今回の研修を経て、もっとふれあいの場のイベントを工夫したいと思いました。例えば、日常生活のマナーとか、コンビニで店員さんはこんな風に話すとか、ごみの分類とか、皆と共有したいと思います。
金文杰さん(昆明): 他のふれあいの場での様々な活動を知り、今後の昆明ふれあいの場活動の参考にしたいと思いました。
季暁琳さん(済南): 済南に戻ったら、今回の研修で行った場所や体験したことをふれあいの場でシェアしたいです。後輩のイベントへの参加意欲を高めることができたら最高だと思います。
姚逸亭さん(ハルビン): 視察旅行で東京国立博物館、スカイツリー、浅草寺などに行くことができたので、実際どのような場所だったかふれあいの場の皆に教えてあげたいです。研修中にいろんなアイデアを得ることができたので、これを今後の活動に生かしたいです。
【取材を終えて】
各地のふれあいの場の様子を聞くことで、今後の活動に向けた新たなアイデアが浮かんだ人が多いようでした。そして「ふれあいの場」の先の目標が具体的になった人もいたようです。今回の研修、そして「ふれあいの場」での経験を糧に、彼らがさまざまな分野で日中交流に尽力してくれることを期待できそうです。
取材・文:鈴木 香織 取材日:2025年2月6日