Interviewインタビュー 「心連心:中国高校生長期招へい事業」第16期生 帰国前報告会とレセプションレポート【前編】
Vol.81 新たな始まりの日を前に
2025年7月17日、「心連心:中国高校生長期招へい事業」第16期生たちの留学プログラムを締めくくる、帰国前報告会及びレセプションが東京の都市センターホテルで開催されました。中国人留学生たちが日本での11か月の留学生活について生き生きと発表してくれた帰国前報告会の様子をリポートします。
心連心の歩み
報告会の冒頭では国際交流基金の原国際対話部長からあいさつがあった。心連心のプログラムは来年で20周年を迎える。2006年の事業開始から16期生まで合わせて463名が本プログラムに参加、卒業生のうち251名が留学や就職などの形で再来日し、その他の卒業生も日本語学科への大学進学や日本語教師、外交官として日本にかかわる業務に従事しているとのことで、心連心の事業によって日中交流の担い手が着実に育っていることが改めて実感された。
続いて映像で第16期生の1年を振り返ったあと、招へい生による活動報告が行われた。
招へい生による活動報告
邢天宇さん
浙江省杭州市出身の邢天宇さんは留学先の北海道の民族や歴史、そして留学中に熱心に取り組んだ化学実験について発表した。化学実験については、化学式を使ってアルコールの分類、ルーカス試薬などについて説明したあと、「勉強する上で、愛は第一の原動力です。自分が好きなことをやるのが一番効率的ですね。そしてさらに、努力も必要です。これからも化学の勉強を続けたいですし、北海道、日本、中国に携われることをしていきたいです」と発表を締めくくった。
周小末さん、廉梁悅さん
四川省成都市から大阪府に留学した周小末さん、山西省太原市から鹿児島県に留学した廉梁悅さんはホストファミリーとの生活について発表した。
周小末さん「私は4つのホストファミリー宅にステイしました。新しいファミリーに会うたびに不安を感じ、慣れてきたころに次のファミリーに移動、という繰り返しでした。ゴミの捨て方、お風呂場の使い方など、生活習慣がわからなくて戸惑う場面がいろいろありましたが、皆さんが優しく説明してくれて、心から感謝しています。この11か月で、自分の気持ち、考えを積極的に伝えることの大切さを学びました」。
廉梁悅さん「ホストファミリーに会う前は、わくわくすると同時に、気に入ってもらえるかどうか心配でした。でもホストマザーが簡単な言葉でゆっくり話しかけてくれて、優しいファミリーに出会えてラッキーだなと思いました。コミュニケーションの際に言葉が出てこないときは、ジェスチャーを使って乗り切りました。この11か月で生活力、コミュニケーション力が向上したと実感しています。そして日本語を話すときの恐怖感が減りました。ホストマザーの『わからないことがあったら、すぐに聞いてね』というアドバイスが役に立ちました。ファミリーへの感謝から、何かお返しをしたいと思い、掃除やお皿洗いを手伝うようになりました。異なる文化との触れ合いで、私の心と世界が広がったと思います。これらの経験はこれからの私の力になると思います。ファミリーに心からお礼を伝えたいです」
張佳瑩さん、念梓辰さん
福建省福州市から長崎県に留学した張佳瑩さん、同じく福建省福州市から大分県に留学した念梓辰さんは、運動部を通じての成長について発表した。
張佳瑩さん「『ハイキュー!!』など日本のアニメを通じて運動部にあこがれを持っていたので、留学先ではバレーボール部に入部しました。最初はあいさつ、準備運動、片付けの方法など、わからないことが多くて大変でした。質問する勇気が出なかったのですが、あるとき思い切って質問してみたら、想像していたような気まずさがなくて、わからなくて困っているのは私一人ではないと気付いたんです。日頃の練習以外では、試合会場で応援の声にとても感動しました」。
念梓辰さん「中国でサッカーをしており、留学先でも迷わずサッカー部に入部しました。顧問の先生は厳しかったけれど同時に優しかったです。サッカー部での活動を通じて、強い意志があれば何でもできること、失敗は成功のもとであることを学びました。そして他人と友好的に付き合うこと、何でも精一杯取り組むことの大切さを知りました」。
舒子楨さん
北海道江別市に留学した湖北省黄岡市の出身の舒子楨さんは国際交流をテーマに発表。留学中に周囲の人から、中国人のステレオタイプをもとに見られていたエピソードを話してくれた。彼らは舒さんと出会って、「本当の中国人にはこんな人もいるんだ。面白いね」というように、ステレオタイプとの違いに気付いてくれたそうだ。また、自身が1人の留学生にとどまらず、中国の代表として扱われていることにも気付いたと言う。ステレオタイプやネットの情報に頼らない、心と心のつながり(心連心)が国際交流において一番大切だと思うようになったそうだ。
雍子璘さん
四川省成都市出身の雍子璘さんは徳島県阿波市の高校に留学。日本に来て、これまでの中国での学びが受け身の姿勢だったことに気付いたという。積極性の大切さを感じ、実際に人形浄瑠璃や藍染め、三味線など、チャンスを求めてさまざまなことにチャレンジした。その結果、自ら学ぶ力がついたと感じているそうだ。そして価値観など違う部分が多くても、共感を大切にすれば分かり合えることも学んだ。また、中国にいたときは習慣になかった、目標作りの大切さも大きな発見だったそうだ。
11か月を振り返って
活動報告のほかに、2人の留学生に帰国前日の思いを語ってもらった。
趙語嫣さん
上海市出身の趙語嫣さんは岩手県盛岡市に留学。当初は友達作りなど、悩むことが多かったけれど、困難を乗り越えた達成感があるそうだ。「サポーター(心連心の卒業生で、現留学生の世話係を務める学生)の方々にも大いに助けられました。電話をすると、食事中でも帰路の途中でも快く話を聞いてくれて、そのおかげで大変なときを乗り越えられたと言ってもいいと思います」。この11か月で日本語力だけでなく、周囲を観察する力も身についたとうれしそうに教えてくれた。「中国に戻ったら日本のクラスメートが恋しくなりそうです」という言葉には、留学先での楽しかった思い出がにじむようだった。
張冉冉さん
河南省洛陽市出身の張冉冉さんは埼玉県に留学。学校では生物部とバレーボール部に所属し、充実した毎日を送っていたという。将来の希望は留学前と変わらず、「日本で応用生物学の勉強をしたいです」とのこと。留学先のクラスメートが花束と寄せ書きを持って駆けつけてくれ、感激に涙する場面も。中国に戻ってまずやりたいことは、と尋ねると「お母さんの料理を食べたいです」と笑顔で答えてくれた。
最後に
一人一人に修了証が授与されたあと、招へい生代表として雍子璘さんが謝辞を述べた。「この1年を通じて、心連心には3つの意味があると思うようになりました。1つ目は小さな共感が積み重なってできた中日高校生の心のつながりです。また、心連心の先輩(サポーター)とのつながりもとても貴重なものでした。悩んでいたときに的確なアドバイスをくれた先輩たちに支えられました。そして3つ目は、今の私たちと将来の私たちのつながりです。明日は帰国日ですが、新たな始まりの日でもあります。この1年で得た経験、勇気、自信に努力を重ねて日中友好の懸け橋になれるよう、努めていきたいと思います」。
招へい生、そして参加者が実り多い11か月の余韻を味わいながら、帰国前報告会は終了となった。
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