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参加者インタビュー

Interviewインタビュー 「心連心:中国高校生長期招へい事業」第16期生 帰国前報告会とレセプションレポート【後編】

Vol.82 国境を越えた理解と感動の10か月

帰国前報告会を終えた後、同じホテルの別会場でレセプションが開催されました。国際交流基金の佐藤百合理事、そして駐日中国大使館の劉丹一等書記官のあいさつとともに始まり、ホストファミリーや留学先のクラスメート、心連心の卒業生なども交えて和やかに歓談が行われた模様をリポートします。

高鈞裕さんとホストファミリーの細石さん

四川省成都市から三重県津市に留学した高鈞裕さん。レセプションではホストファミリーの細石さん夫妻と、過去に細石家にステイした心連心の卒業生たちと一緒に和気あいあいと“大家族”の時間を楽しんでいた。

――これまでたくさんの留学生のホストファミリーをされてきたと聞いています。

細石さん「そうですね、何人ホストしたかもうわからないくらい(笑)。なぜか四川省出身の留学生が多かったです。今回の高さんも四川省の成都市出身ですね」

――留学生を通じて四川料理にもかなりなじまれたのでは?

細石さん「いいえ、まったく! 私(ホストマザー)は辛い物が苦手なので、私のいないときに高さんと夫が火鍋を作って食べていたようですよ」

――高さんはホストファミリーのお宅で、どんな食事が好きでしたか?

高鈞裕さん「お母さんが作ってくれるカレーライスと、おばあちゃんが作ってくれるすきやきが好きでした!」

――中国に戻ったら、日本の何が恋しくなりそうですか?

高鈞裕さん「・・・ファミチキかな・・・」

細石さん「私が迎えに行くときに、いつもファミリーマートの中で待ってもらっていたんです。それで思い出の味になったんでしょうね(笑)」

――ステイ中に困ったことはありましたか?

細石さん「ペットの犬が最後まで苦手だったようです。猫には慣れてくれましたが」

高鈞裕さん「中国ではペットは珍しいですから・・・」

廉梁悅さんのホストファミリー、沼田さん

報告会、レセプションの会場では廉梁悅さんを温かく見守る沼田さんの姿があった。

――廉さんのステイで印象に残っていることはありますか。

優しい心を持った子なんですが、その気持ちを伝えるのが苦手なようで、本人なりにいろいろ苦労していたようです。我が家には主に週末と長期休暇にステイしていたのですが、彼女を何とかサポートしたいという思いでいましたね。

――辛い時期があったんですね。廉さんなりにその時期を乗り越えられたのでしょうか。

私たちも励ましましたし、学校の先生も助けてくださって、ある時から「ああ、廉ちゃん変わったな」と思いました。うちで家事を手伝ってくれたり、苦手だったペットの世話もしてくれたりして、表情が明るくなったことを覚えています。本当によかったなと思います。

周小末さんのホストファミリー、宮前さん

中学2年生の次女と大阪から会場に駆けつけた宮前さん。周さんとの思い出がよみがえり、「帰国前報告会の最初からずっと泣いていた」そうだ。周さんは式次第の合間にしばしばホストファミリーのもとに立ち寄り、甘えた表情で会話を交わす様子はまるで本当の家族のようだった。

――ホストファミリーになったきっかけを教えてください。

長女が高校で、心連心の留学生のホストファミリー募集、というチラシをもらってきたんです。高校生と中学生の娘のためにも異文化交流を、という思いがあって、お引き受けすることにしました。同年代の子どもがいることで、留学生のサポートを大人だけで担わなくてよい点もよかったですね。

――ホストファミリーを経験するのは初めてだったのですね。苦労や工夫など、印象に残っていることはありますか。

日本人と違って「察する」ことを期待してはいけないと気付きました。言わないとわからないんだ、と思って何でも口にするようになってからは、いろんなことがスムーズに進むようになった気がします。

――周さんは11か月を4つのホストファミリー宅で過ごしたと聞いています。

はい、我が家は2家庭目でした。ホストファミリー間で食事や生活習慣について申し送りをするなど連絡を取り合って、新たなご縁ができたのもうれしかったです。別のファミリーに移動してからも、週末は双方の家族が集まってお花見をするなど周さんを交えて行き来がありました。新たなご縁と言えば、サポーター(心連心の卒業生で、現留学生の世話係を務める学生)の方たちと知り合えたのもよかったです。我が家に遊びに来てくれたサポーターもいて、周さんをきっかけにいろいろな交流の輪が広がり、とても楽しい経験をさせてもらいました。

――思春期の娘さんたちがいて、留学生のホストファミリーになるご苦労もあったかと思います。

姪を預かるような気分で、特別な気負いはなかったんです(笑)。思ったことをはっきり言ってくれるという点で、日本人のお友達よりも付き合いやすいようで、特に共通の趣味がある中学生の次女とは本当の姉妹のように仲良くしていました。

心連心の経験を振り返って ――卒業生の話

会場には多くの卒業生が駆けつけ、共通の留学先やホストファミリーを持つ人同士が新たな親交を結ぶ場面もあった。

――今、心連心での経験を振り返ってどう思われますか?

祖天琳さん(4期生)「私は小さい町の出身なので、心連心がなければ若いうちに外国に行くことはなかったでしょうし、この経験が人生を変えたと言っていいと思います。心連心のあと、中国で高校を卒業して大学は日本に進学し、そのまま日本で就職しました。両親は寂しがって強く引き止めましたが、振り切って来ました(笑)」。

陳豪さん(11期生)「私も心連心で人生が変わりましたね。留学のおかげで日本語力がずいぶん鍛えられたので、日本での進学も有利になりました」。

写真を拡大歓送レセプションでホームステイ先が同じご家庭だった先輩たちと嬉しい対面
写真を拡大サプライズで空港まで見送りに来てくださったホストファミリーと再会し嬉し涙

卒業生代表、白 雪純子さん

心連心の2期生として、2007~2008年に京都の高校に留学した白さん。17年前の帰国時に、未来の自分に宛てて書いた手紙を受け取り、卒業生代表としてあいさつをした。「私は現在、シカゴ大学で心理学の准教授をしています。心連心はキャリアの基礎を作ってくれただけでなく、世界の見方そのものを変えてくれました。東京大学で教育社会学、プリンストン大学で心理学、公共政策を学び、今は人間と人工知能のステレオタイプ、偏見、移民問題の研究をしています。でもどんな論文や理論よりも、高校と大学での学びが一番大きかったと思います。皆さんも心連心での経験を、これからの人生を形作る視点にしてください。今後のご活躍を心から楽しみにしています」。

11か月の締めくくりとして

最後に招へい生を代表して、高鈞裕さんからあいさつがあった。「日本に来たときは、まるで1枚の白い紙の自分が色とりどりの環境に囲まれたような気分でした。週末も音読の練習に立ち合ってくださった高校の先生、毎日『がんばってね』と声を掛けてくれたホストマザー、火鍋を一緒に食べてくれたホストファーザー、拙い日本語にも優しく付き合ってくれた学校の友だちなど温かい人々と絆を築き、中日友好の小さな使者になることができました。この1年の経験は貴重な宝物です。国境を越えた理解と感動を忘れず、出会った人たちとの物語を語り続けたいと思います」。

16期生が留学生活最終日の思いを託して『secret base~君がくれたもの~」を合唱し、レセプションは締めくくられた。その後も、名残を惜しんで歓談を続ける人たちで会場は遅くまでにぎわい続けた。

取材を終えて

1年を振り返る映像や活動報告、そしてサポーターやホストファミリー、留学先のクラスメートの話から、16期生の充実した留学生活がひしひしと伝わってきた報告会・レセプションだった。当日参加してくれた卒業生が口々に「心連心が私の人生を変えた」と言っていたことも印象的だった。多くの人に支えられながら異国で過ごした1年の経験を踏まえて、16期生は今後どのような人生を歩んでいくのだろう――未来の彼らと日中友好に思いをはせつつ、心連心プログラムのますますの発展を願った夜だった。


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