参加者インタビュー
Interviewインタビュー 日中21世紀交流事業に参加された方々に交流を振り返っていただきました
瀋陽から京都へ― スーパーグローバル校でも評判の優等生
古都・京都市から南東へ8キロ。国際化教育の盛んな立命館宇治高校で、ひときわ輝く留学生がいる。遼寧省瀋陽市出身の李彩維さんは、チアリーディング部での部活動も頑張りつつ勉強に励んでいる。日・中・英の3カ国語を駆使する高校生活を送る彼女の姿を伝えたい。
「では、諸君に冬休みの宿題だ。近年はスマートフォンなどを通じて気軽にSNSサービスを利用できる時代になっている。この件についてどう思うかを考えて、来学期に発表してくれ」
2014年12月22日。今学期最後の授業の開始を告げるチャイムが鳴るやいなや、英語でそう話しかけるのはニュージーランド出身のエッセル先生だ。学生たちも慣れた調子で、流暢な英語を駆使して先生の問いに答えていく。
国際的に活躍できる人材の育成を掲げた、京都府の私立立命館宇治高等学校。文部科学省が全国56校を選抜したSGH(スーパーグローバルハイスクール)指定校でもある同校において、そんな英語の授業風景はありふれた日常のひとコマとなっている。心連心プログラムを通じて、中国遼寧省から留学した李彩維さんは、英語の上級クラスの中でも一目置かれる存在だ。
「優しくて穏やかな性格の子ですが、成績は非常に優秀。英語でのコミュニケーションにも不自由はありません」(エッセル先生)
やがて教室移動がおこなわれ、引き続きIT教室で英語の授業が進む。李さんが手元に置くのは、日本語と英語の電子辞書だ(言うまでもなく、どちらも彼女にとっての「外国語」である)。近くの席の男女のクラスメイトと気軽に言葉を交わしながら、エッセル先生の質問にさくさくと答えていく姿が実にカッコいい。
この前、留学生のスピーチの会で彼女は『今を生きる』というテーマで話してくれていたのですが、日本語が上手すぎてその場にいた全員がどよめいたほどです(笑)」
同校の国際センター長を務める、久保敦先生はそう語る。同校は海外に84校もの提携校を持ち、中国をはじめノルウェー・スウェーデン・ニュージーランド・オーストラリアなど世界各国からの留学生を受け入れている。国際色豊かな学校だけに、彼女の存在は他の生徒にもいい刺激になっているようだ。
未来の生物学研究者の大敵は「京都の寒さ」?
「私が小学校1年生から4年生の時まで、母が仕事の関係で日本に単身赴任をしていたんです。そこで、私は冬休みや春休みに母に会いに日本へ行ってました。当時は日本語を話せなかったのですが、空気や水が『きれいな国』というよいイメージが強かった。それが留学する動機のひとつになりました。ただ……、いざ留学してみると、以前とは違ってお金の管理なんかも自分でちゃんとしなければいけないので、昔とはちょっと感覚が違います。しっかりしなくちゃ」
李さんは留学の動機をこう話す。
ところで、立命館宇治高校は京都府内にある学校だけに、先生やクラスメイトも(日本語を話すときは)関西弁を使うことが多い。だが、相手が早口でなければ聞き取りにも問題はなく、部活やクラス内での話し相手も大勢いるという。むしろ、李さんの京都生活における最大の敵は「冬が寒い」ことだった。
「故郷の瀋陽は11月から室内で暖房をガンガン焚くんです。なので、体感的には暖房が少ない日本のほうが寒い! あと、制服のスカートもめっちゃ寒いんですよ。日本の女子高生ってすごいなあ……と思う毎日です(笑)」
もっとも、寒さには慣れなくても学業に支障はない。李さんは現在、理系クラスに所属しており「国語以外は、勉強は大体OK」。得意科目は化学である。将来の夢についても尋ねてみた。
「将来のことはわかりませんが、生物分野の研究者になりたいなと思っています。iPS細胞とか……。ガン細胞の研究をしてみたいんです」
彼女が進学先として目標に掲げるのは、なんと東京大学である。グローバルに活躍し、世紀の難病と戦う。李さんの夢は、これからもどんどんふくらんでいく。
(取材・文 増田聡太郎 2014年12月22日)