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イベントレポート

広州ふれあいの場:「春の特集」和歌コンクール

 広州ふれあいの場が主催した「春の特集」和歌コンクールは、中山大学、暨南大学、北京理工大学など多くの大学の学生から合計15点の投稿が寄せられました。投稿作品は和歌という独特な日本語の詩歌の形式を用い、文字の力を借りて春の各々な風情と日常の美しさを短い詩句に巧みに表現し、春への賛美と生命への礼賛が込められています。

 本コンクールは中山大学日本語学科の徐愛紅先生、渋谷淳一先生、重原翼先生が審査員を務めました。ネット投票と三名の審査員の先生による総合的な審査を経て、選考結果は以下の通りです。

  • 一等賞:13号 赵小芸
  • 二等賞:8号 罗帜琪、12号 张眉、10号 阮晓岚
  • 三等賞:5号 李若宇、11号 孙雯雯、1号 邓文茜、9号 聂梓晴、4号 李嘉璇
  • コウフレ奖:2号 邓文茜、3号 黎铭诗、6号 李欣遥、7号 廖曼琳、14号 钟甘蕊、15号 周欣悦

本大会について、審査員の一人である渋谷先生が次のように総合評価をしています。
「今回の作品群は視覚性に優れている作品が多かった、このことは大いに驚かせていただいた。しかし、想いという点ではやや控えめな表現に留まっている作品が多かった。短歌は31字から成り、17文字の俳句よりも、詠み手の想いが反映しやすい。そんな中でも13号や11号の作品は、なかなか客観的には表現しづらい自分の想いが詠み込まれていたところがよかったと思う。」

続きまして、一等賞から三等賞の作品と審査員のコメントを御覧ください。

  • 一等奖:13号 赵小芸

春の枝
冬から目覚め
手を伸ばし
「君も起きろ!」と
川に声掛け

審査員のコメント:
1.この作品からは、春を迎え新しいスタートが自然の中では騒がしいほどに生じているが、まだ私たち学生はただ流れる川のようで、いまいちきっかけを掴めないというシーンが思い浮かんだ。確かに、学生の周りでは新学期ということで教員や新しい教科書などが色めきだっているが、学生にとっては夏休みまでの辛い勉強期間のはじまりである。そう考えると、「石」ではなく、まだ変化を感じさせる「川」とした点は、詠み手のまじめさを感じた。
2.川に声をかけるという発想が生命力あふれる春に合っていてとても素敵です。
3.「枝が目覚める」「手を伸ばす」「君も起きろ!」と擬人化を活用したこの作品は、ダイナミックな視覚効果があり、ユーモアに富み、生き生きとしていて面白い一首である。

  • 二等奖:8号 罗帜琪

「春の出会い」
バウヒ二ア
風に舞い落ち
手に触れて
心に響く
春から贈り

審査員のコメント:
1.動的なイメージを喚起させる、最も視覚性に優れた作品。紫荊花にあえてカタカナで使うことで、普遍的な情景ではなく、今を描き出そうとした意図も十分に伝わった。下の句で「春から贈り」をより具象化できたら、詠み手の感動を読み手が理解することが出来ただろう。
2.やさしい風が吹き、花が落ちる状況が暖かい気持ちにさせてくれます。
3.自然と人間のふれあいが巧に表現された一首である。

  • 二等奖:12号 张眉

春霞
万目覚めて
不如帰
若葉で歌い
勉強急ぐ

審査員のコメント:
1.春の目覚めと勉強とのコントラストが面白くて好きです。
2.春霞といった視覚的な描写と若葉で歌いという聴覚的な要素が組み合わさっており、春の到来とともにキャンパスの日常風景が目に浮かぶ。

  • 二等奖:10号 阮晓岚

枝に咲き
春の息吹
古き良き
木棉と散声
心に満開

審査員のコメント:
1.心を満たしてくれるという落ち着いた描写が好きです。
2.枝先に咲き誇る木綿の花に寺院の雅楽演奏、心に響いたものに共鳴できる。

  • 三等奖:5号 李若宇

梨花咲く
古寺静かに
石に苔
歴史語る壁
春の光中

審査員のコメント:
1.ひっそりとたたずむ雰囲気が伝わり、また春の暖かさも感じました。
2.春の描写と歴史的な要素が巧みに組み合わさっており、全体的に穏やかで心安らぐ雰囲気を作り出している。

  • 三等奖:11号 孙雯雯

道端で
人に知られぬ
花盛り
今や咲くらむ
あなたを待ってる

審査員のコメント:
1.最近の日中の若者や、アニメやマンガ作品に見られる、自己肯定感は低いが承認欲求は高いという気持ちを自虐的かつリズミカルに表現した作品だと感じた。「人に知られぬ 花盛り」という孤独感を口にした後で、すぐに「今や咲くらむ」と猛烈アピールする転回は、作者のセンスを強く表していると思う。
2.人知れず咲いている花という目の付け所が素敵だと思います。

  • 三等奖:1号 邓文茜

ザーザーと
また雨が降る
ジメジメと
壁がぬれぬれ
広州の春

審査員のコメント:
1.擬音を3つも使うという快作である。特に回南天を「壁がぬれぬれ」とコミカルに表現したセンスを高く評価したい。おそらく広東出身の詠み手にとって、屋内の壁さえも水滴に覆われる回南天は、大きな問題ではなく、笑って過ごす類のことなのだろう。
2.文字通り、広州をわかりやすく表していると思います。

  • 三等奖:9号 聂梓晴

新緑は
枝から芽吹く
黄葉は
ほろほろ積もる
南国の春

審査員のコメント:
1.新緑の力強さが感じられるし、色のコントラストもいいですね。
2.新緑の芽吹きと黄葉が積もる様子を対比的に描き、広州の春、南国特有の気候の多様性をを表現している視点が興味深い。

  • 三等奖:4号 李嘉璇

見渡せば
梅にも負けず
木綿花
花も変わらじ
春も絶えねば

審査員のコメント:
1.広東の春といえば木綿花である、橙の木綿花が咲き乱れる風景は南国ならではのよさと言えるだろう。梅のような大人しさではなく、すぐ夏を迎える広東の春を知らせる木綿花の力強さをこの作品から感じることができた。
2.木綿花の力強さが伝わります。

 

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