広州ふれあいの場:ショートショートの書き方講座
国際交流基金と広州ふれあいの場共催のショートショートの書き方講座が、2024年10月31日に中山大学外国語学院で行われました。
今回の講座では、ショートショート作家の田丸雅智先生がショートショートの書き方を教えてくださいました。三年前、田丸先生は広州ふれあいの場と重慶ふれあいの場との共催でショートショートを書くオンライン講座を開催したことがありましたが、今回は対面で講義をしてくださいました。中山大学の日本語学科、数学科、臨床医学科の学生40人余りが受講しました。
田丸先生は、今回の講座の目的は「想像力と論理的思考力を高めること」にあると強調し、学生一人一人に想像力を発揮し、ユニークなショートショート小説を書いてほしいと述べられました。ショートショート小説を書くのにステップが3つに分けられます。まずは「奇妙な言葉を作る」ことです。先生は学生たちに20の名詞をランダムに書かせ、その中から1つを選んで、その名詞が連想するものを10個書くように指示しました。2つ目は「奇妙な言葉から想像の翼を広げる」ことです。最初に書き出した20の言葉と後に書き出した10のフレーズを組み合わせて、新しいフレーズを作成します。例えば「発電生物」「日傘」など。このフレーズを中心に、可能な形を描き、その用途、長所、短所を想像します。最後に、「想像していた内容を一つのエピソードにまとめ」ます。
学生たちが田丸先生のご指導のもと、「歌える風」、「鼻が長い月」、「一緒に暮らそうケヤキ」、「暗黒樹海の中の銀河」、「スタンプみたいな空港」、「鏡の中のシティー」などの面白い言葉を思いつき、これらの造語をもとに、一人一人不思議なショートショート作品を創作していました。
最後に、田丸先生から指名された3名の学生が、それぞれの作品である『寝不足が怖い蜘蛛のための「寝言葉セラピー」』、『鼻が長い月』、『発電に使える天ぷら』を朗読しました。田丸先生は真剣に聞いた後、3名の学生の創造力を肯定し、いくつかのコメントをしました。
イベントの最後に、田丸先生から『おとぎカンパニー妖怪編』、『ショートショートでひらめく文章教室』、『マタタビ町は猫びより』の3冊の著書を広州ふれあいの場に贈呈いただきました。
講座は終わりましたが、ショートショートの創作は始まったばかりです。田丸先生の丁寧なご指導のおかげで、多くの学生がショートショートに興味を持つようになりました。日常生活の曲がり角で、無数の可能性と偶然の出会い。「ショートショート」という「想像の翼」が、学生たちを連れて日常を越え、創作の中で生活のより広い次元を探るよう願っています。
付録①:講座で朗読した学生の作品
『発電に使える天ぷら』
未来には新しいエネルギーが開発される。このエネルギーは最も清潔で、発電効率の高いものなのに見過ごされている。しかし、2070年にはエネルギー資源として使えるようになる。それは毎日の食卓にある天ぷらである。
多くの発電所が次々と天ぷらを燃料に使うようになったが、燃料としての天ぷらはまだまだ足りなかった。そこで発電所は国際的にも有名な料理人を招いて、より多くの天ぷらを作ってもらうことにした。世界中の料理人が天ぷらを作るために努力しているにも関わらず、電気が依然と足りないと不満が絶えなかった。
それはなぜなんだろうか。実を言うと、有名な料理人が作った天ぷらはあまりにも美味しくて、発電所の社員にこっそり食べられてしまったのだった。
(汪冰慧さん作)
『寝不足が怖い蜘蛛のための「睡眠言葉セラピー」』
先日、寝不足が怖い蜘蛛のために、科学者たちは努力を積み重ねた末に「睡眠言葉セラピー」を発見した。実験の結果から見れば、このセラピーは、蜘蛛たちが寝不足で焦りを感じたり、明日用事があるためにちゃんと睡眠を取らなければならない時にすぐ効くし、副作用のないものだと言われた。このセラピーを試したい蜘蛛たちは、まず、気に入った天井まで行って、睡眠に適した心地いい体勢を整えること。準備ができたら、心を込めて自分の名前「蜘蛛(クモ)」という言葉を9(ク)回モ唱えること。そうしたら、空でいつも呑気に寝ている雲(クモ)のようにぐっすり眠りに落ち、甘い夢も見るようになるということだ。ただ、一つ注意すべきことは、このセラピーは一見簡単そうだが、集中力と精神力が必要だと言われる。長時間使うと、精神的に不可逆の反応を及ぼす可能性がある。くれぐれもやりすぎないように気をつけることだね。
(趙小芸さん作)
『鼻が長い月』
キリンは首が短いものから長いものになったという進化のプロセス、皆さん、きっと聞いたことがあったのだろう。実は、最新の研究によると、月も進化しつつあるそうだ。どのように進化するかというと、月は鼻をもち、どんどん伸びるということだ。未来、2100年になると、地球まで伸びるそうだ。つまり、鼻の長い月は76年後に登場するということだ。我々の世界はどうなっていくのだろう。皆さん、想像してみてください。
そういえば、僕は夜に迷子になることが多く、とても困っているのだ。月は太陽ほど光が強くなく、夜になったら周りはっきり見えない時が多かった。でも、もし鼻の長い月が登場したら、月の光は長い鼻を通して地面に届き、柔らかく眩しくない月光が街灯の代わりに街を明るくしてくれるため、迷子になる心配も不要になり、電気のエネルギーも節約できるのだ。そして、人類は2100年までに月球を開拓する計画が立てられているため、月の鼻に吸い込まれて数秒だけで地球から月にまで遊びに行けるようになる。ただし、行く人が多かったら、月は鼻が詰まったり、くしゃみしたりしたりすることもあろう。そうしたら、人々が地球に戻されてしまうこともあり得る。お月様を困らせないように、わたしたちはちゃんとマナーを守ろう。
(鄒雨鵬さん作)
付録②:受講の感想
・先生の今回の講座に感謝いたします。私も自分でショートショートを書いてみることができました。実は私はずっと短編小説やSF小説に興味を持っています。星新一の作品も読んだことがありますが、自分でショートショートを書く体験はありませんでした。先生が講座でご提案くださった、異なる名詞と属性を組み合わせた方法が印象的で、これからもこの方法を使って文学創作を試みたいと思います。先生のご指導に改めて感謝します。ありがとうございました。(from汪冰慧)
・今回のすばらしい講座を通じて、私はショートショートの創作方法を学びました。最も印象的なのは田丸先生が特殊な表を用いて、私たちを一歩一歩導いてくださって、最後に自分にとって初のショートショートを書くことができたことです。創作の過程で、私たちはまず奇妙な言葉を考え出して、それから言葉から奇妙な物語を連想して、このような学習経験は以前体験したことがありません!また、学生たちが共有している小小説も面白く、先生のコメントも素晴らしかったです。忘れられない講座です。(from劉雯雯)