広州ふれあいの場:第2回フォトコンテストを開催
広州ふれあいの場が2025年5月、第2回フォトコンテスト(テーマ:「思い出の一枚」)を開催しました。中山大学や広東白雲学院の参加者から計11点の応募が寄せられました。その内、写真+短文の作品が6点、写真+短歌の作品が5点です。それぞれの作品には、洞察に満ちた視点と繊細な表現を通して、作者の大切な思い出が語られています。審査は短文部門と詩部門に分けて行われ、3名の審査員による選考の結果、今回のコンテストの入賞作品が次のとおり決定しました。
【短文部門】
最優秀賞:羅彤彤
優秀賞:李琳,刘曉君
【短歌部門】
最優秀賞:何应辉
優秀賞:阮晓岚,崔伊蓝
以下、本大会の受賞作品および講評です。
【短文部門】
最優秀賞:罗彤彤

この写真は、阿蘇山火口の近くで撮ったものである。投稿した理由は、その背景にある経験を通して、自分の成長を実感できたからだ。年末年始に、日本九州への初めての一人旅に挑戦した。全てを自分で計画し、判断しなければならず、不安もあった。特に難しかったのは、予想外の出来事への対応である。
その日、午前に神社、午後に阿蘇山を訪れる予定だったが、逆方向の電車に乗ってしまい、気づいた時には終点だった。往復2時間を無駄にし、二つの行き先のうち一つを諦めるしかなかった。車内では、自分のミスを何度も悔やみ、計画が崩れた不安と焦りに涙が出そうになった。
それでも気持ちを切り替え、長時間かけて阿蘇山へ向かった。疲れた体でたどり着いた火口付近では、白い噴煙と雄大な風景に心を打たれ、自然の力強さに深く感動した。そして、計画どおりにいかなくても前に進めたことで、自分の内面が少し強くなったと実感できた。
審査員のコメント:
※より一層の達成感と感動が味わえた貴重な体験だったと思います。自然の力強さが自分の心の強さと重なったそんな瞬間に撮った写真なのかな、といろいろ想像してしまいました。
※海外での一人旅は、ちょっとしたことが私たちの心に大きな衝撃を与え、そして小さな変化を与えてくれます。そんな体験がよく描かれていると思います。そして、昼の賑やかな観光地とは違い、夕方に差し掛かった観光地は自然としての本性を表し、あなたに迫ってきたのだと思います。そんな気分を追体験できました。
優秀賞:李琳

8年前に、白雲学院の教職員寮に住んでいた時に撮った息子の写真です。
当時はまだ息子は三歳になったばかり。
小雨がふんわりと降っていた有る夏の日でした。
息子は、「パパ、まだ?」と繰り返して、パパの帰りを楽しみにしていました。
「もうちょっとで帰るでしょう」と答えたら、自分のレインコートを着て、寮の前でパパが現れるのをじっと待っていました。
大き目のレインコートと小さな体が対照的で、真剣な表情で雨の中で立つ姿が一瞬響いてきて、思わずその瞬間をスマホで記録しました。
父親と息子の特別な絆——あの日の雨粒のようにきらめく、形のない温もりが、この一枚に沁み込んでいるのでしょう。
審査員のコメント:
※パパを待ちきれず外に出てしまっただけでなく、お子さんはきっと雨に打たれ、背筋を伸ばし、じっと待つことでパパが早く帰ってきてくれると分かっていたのでしょう。そんな気持ちにさせてくれる作品でした。
※顔は見えていないのに背中から真剣な表情がわかるくらい、じっと立って待つ姿。「まだ?」と声が聞こえてきそうなあたたかい瞬間の写真だなと感じました。
優秀賞:刘晓君

大学を卒業した夏、はじめて日本に行った私と友達は、まるで夏の日の恋に浸っていたような毎日を過ごしていた。京都や大阪、東京といった大都会も素晴らしかったが、宇治や奈良、鎌倉といった風情ある町々がとりわけ心に残っている。
特に宇治は忘れられない思い出だ。抹茶の名産地として知られるこの町で、私たちは濃厚な抹茶パフェを満喫していた。友達は宇治を舞台にしたアニメの大ファンで、二人でゆっくりと街歩きを楽しんでいた。木々と川に囲まれた宇治の風景は、まるで抹茶パウダーをふりかけたような優しい緑に包まれ、心が自然と癒されていくのが感じられた。
涼やかな風が頬を撫でる。宇治で過ごした時間は、卒業旅行の一枚の絵葉書のような思い出だ。あの瞬間の幸福感は、宇治という町がくれた魔法だろうか。
審査員のコメント:
※中国や他の国のみなさんの文章を読んでいると、しばしば日本人よりも日本を楽しんでいるのではないかと思うことがしばしばあります。この作品もそんな気持ちにさせられるとともに、若者特有の瑞々しい世界観にめまいがしてしまいます。ぜひ、多くの文章を残してください。
※背景にフォーカスが合っているので、まるで自分が、抹茶を飲みながら遠くの緑を見て癒やしの時間を過ごしているような気分になりました。緑を表現する言葉も好きです。
【短歌部門】
最優秀賞:何应辉

鴉群れ
四線譜織る
風の歌
審査員のコメント:
※日本ではカラスは不吉の象徴であるとともに、知性的で時に愛嬌のある動物と捉えられています。この作品は後者のカラスイメージにぴったりで、ぱっとしない空の下で、自らを楽譜に見立てて遊んでいるカラスがうまく表現されていると思います。
※群れの中でもそれぞれ動きがあって、落ち着いた静かな音楽や歌が聞こえてきそうです。また曇り空がそんな雰囲気を引き立てているのも素敵です。
優秀賞:阮晓岚

去りてのち
初雪舞い降り
君の街
白く染めつつ
見ゆることなき
審査員のコメント:
※気になる?愛する?敬愛する?あの人が住み、私が別れを告げた街に雪が降る。そして、そこには私が知らないあの人の表情や感情がある、とてもロマンチックな一首だと思います。結句を一つ前に繰り上げて、より踏み込んだ描写にしてもよかったのではなかいかと思います。
※晴れた空の下の雪景色を見ると、「雪国に行きたい」という衝動に駆られます。「去っていくのが私なのか、あなたなのかは分からないけれど、もしあなたなら、この大雪はあなたへの餞別と祝福。もし私なら、それはきっと心残り。でも、来年初雪が降る日に、必ずあなたの故郷を訪ねるよ。」といろいろな想像を掻き立ててくれる作品だと思います。
優秀賞:崔伊蓝

よだかの星
旅立ちの 空にひとつの 星明かり
故郷を離れる朝、静かな空に浮かんだ一つの月。
それを「よだかの星」と名づけた。
その名の響きが、なぜか心にぴったりと響いたから。
日本で見上げた夜空も、同じように美しかった。
「ただいま」と言える星が、空にはある。
審査員のコメント:
※宮沢賢治の『よだかの星』は非常に多くの解釈が海外の人々によりなされているそうです。孤独に美しく輝く月は、出発点でもあり、時に羽を休め安心を確認する場所でもあるようですね。
※月は中国人にとって、故郷を想う気持ちの象徴です。作者は作品の中に日本の要素を取り入れることで、遠く離れた東の海の彼方にある郷愁の思いを、巧みに、そして感動的に表現しています。
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