参加者インタビュー
Interviewインタビュー 日中21世紀交流事業に参加された方々に交流を振り返っていただきました
全員21世紀生まれの第12期生が来日、新世代の交流に寄せる期待
2017年9月8日、東京で「心連心」第12期生来日歓迎レセプションが開催された。30名全員が2000年以降生まれで来日経験者も多い第12期生。新しい世代の交流が始まりつつあるようだ。
21世紀生まれの12期生、来日経験者は約半数
来日経験のある子がずいぶん増えた――。第12期生のプロフィールを見て、まずそう感じた。昨年の「留学ドキュメンタリー」(第11期生第1話)で来日経験者が増えたことはすでに報告されているが、今期は30名中17名が来日経験者、そのうち来日3度目という生徒も珍しくはない。
来日歓迎レセプション当日、式の前に、生徒たちに話を聞くと、「母親と一緒に大阪、京都、奈良などを15日間旅行した」(尹一茜(いん・いっせん)さん)、「2年前に東京と大阪と名古屋に行った」(張嘉琪(ちょう・かき)さん)など、日本旅行の話が次々に飛び出した。
中には、「両親が旅行好きで、小さいころからアメリカやヨーロッパ、日本などいろいろ行きました」(施奕璘(し・えきりん)さん)という生徒も。
「8歳の時に家族と旅行に来て、今年の冬休みにも来ました」と話す趙一青(ちょう・いっせい)さんは、祖父が20年ほど前、日本に留学していたそうだ。
また、「東京で1週間ホームステイした」(張睿(ちょう・えい)さん)、「中学生のとき修学旅行で日本の姉妹校に行った」(丁博思(てい・はくし)さん)などの話も聞いた。
その一方で、初来日の江娉(こう・ひん)さんと劉雯珊(りゅう・ぶんさん)さんは、「慣れるかどうか少し不安」と緊張気味だ。「東京で初めて電車に乗ったときは、すごく大変でした」と、江さん。
しかし、二人とも初来日とは思えないほど日本語が上手い。ともに福建省の福州外国語学校で日本語を学んできたと言う。
日本のどんなところに興味があるかと聞けば、江さんは「日本のドラマや、中国とは異なる文化に興味があります」、劉さんは「日本の少年漫画が好きです」と、なかなか達者な日本語で答えが返ってきた。
今期から全員21世紀生まれの12期生。彼らの話を聞いていると、見た目も話し方も、日本の高校生とあまりかわらないように思えてくる。
近年、日本と中国の「距離」が近くなり、青少年の交流も新たな段階に入りつつあるのではないかと感じた。
日中国交正常化45周年の節目に、さらなる交流の推進を
歓迎レセプションがはじまると、それまで賑やかだった生徒たちの顔が引き締まった。
阿南惟茂・日中交流センター所長が関係者への御礼と生徒たちへの励ましを述べたあと、中華人民共和国駐日本国大使館教育部の胡志平・公使参事官からは、安全に注意し、よく学び、よく交流してほしいというメッセージが贈られた。
特に、今年は日中国交正常化45周年、来年は日中平和友好条約締結40周年という節目にあたる。「お互いに協力して、ぜひ両国の交流をさらに推進し、相互理解を深めていきたい」と結ぶ胡公使の言葉を、生徒たちは神妙な面持ちで聞いていた。
続く生徒たちの自己紹介は、毎年、ちょっとした緊張の瞬間だ。大勢の来賓を前に、一人一人立ち上がって、名前と出身、留学先を述べる。多少つかえることもあったが、リハーサル通り全員がちゃんと言えた。
生徒代表挨拶の大役を担うのは、広州外国語学校から来た羅清麟(ら・せいりん)君だ。日中で意味が異なる「勉強」という漢字を例に、自分自身が体験し、肌で感じることの大切さ、留学生活を通じて、両国の明るい未来を築く努力をしたいという抱負を流暢な日本語で語ると、会場から大きな拍手が起こった。
次に、第9期生から受け入れを行っている龍谷高等学校の喜多秀哉校長から、歓迎のご挨拶をいただいた。喜多校長のユーモアたっぷりの暖かいメッセージに、緊張ぎみだった生徒たちの顔にも笑顔が戻る。
最後に、日本側代表生徒として、東京学芸大学附属国際中等教育学校の林瑚々路さん、「心連心」卒業生代表として、第5期生の温晧恒(おん・こうこう)さんからも励ましのメッセージが贈られた。
ダンスから乗馬、カーレースまで、多様化する生徒の趣味
第12期生のプロフィールを見て、もう一つ気づいたことがある。それは、趣味が多様化しているということだ。以前はアニメやマンガ、音楽鑑賞や読書といった内容が主だったが、今はダンスや絵画、ミュージカル鑑賞、ゴルフや乗馬などと書いている生徒もいる。
趣味に「カーレース」と書いた陳天行(ちん・てんこう)君に話を聞いた。
「中学1年の時、テレビでF1を見てファンになりました。でも、小さいころからずっと車に興味をもっていました」
日本は初めてという陳君は、少し緊張気味にゆっくりと言葉を選びながら話す。日本語を学んだきっかけも、日本の自動車メーカーに興味があったからだそうだ。
「将来は自動車のデザイナーになりたいです」と陳君。
また、冒頭で小さいころから海外旅行経験があると語っていた施奕璘(し・えきりん)さんの趣味はカバンを作ること。きっかけは「教師の日」に、先生に手作りのカバンを贈ったことだった。
中国では毎年この日、先生に感謝を込めて贈り物をする習慣がある。ところが、高価なものを贈る生徒が増え、施さんの学校では、「高いものより手作りのものを」という指導があった。そこで、カバンを作ってみたところ、案外面白くてはまってしまったそうだ。
他にもコンピューターの組み立てと修理が得意な張禹羲(ちょう・うぎ)君、テコンドーが特技の代澤瑞(たい・たくずい)さん、料理好きな劉恩銘(りゅう・おんめい)君など、生徒たちの趣味の広がりに、時代の変化を感じた。
「家庭が裕福になってきて、自分のやりたいことをもっている生徒が多い。留学先でも勉強一筋ではなく、部活動に興味をもつ生徒が増えました」と、日中交流センターの職員。
そんな彼らが留学生活のなかでどのような出会いを得て、何を学んでいくのか。また、日本の生徒たちにどんな素敵な影響を与えてくれるのか。
21世紀生まれの「新世代」たちの活躍に期待したい。
【取材を終えて】
日本側の生徒代表として壇上に立った林瑚々路さんは、今年3月、日中交流センターが公益財団法人かめのり財団と共催した日本高校生「中国ふれあいの場」訪問事業で中国を訪れ、現地の学校見学やホームステイを体験した。その林さんに中国の生徒の印象も聞いてみた。
「みんな元気で積極的。学ぶことにとても意欲がある」と林さん。日本語教室では、生徒たちがつたない日本語でも、一生懸命話しかけてきてくれたそうだ。
「チャレンジする精神があれば、相手はくみ取ってくれるし、そこにコミュニケーションが生まれる。何にでもチャレンジすべきだということを、彼らから学びました」
今回、第12期生の「新世代」ぶりに目がいったが、たとえ時代が変わっても交流の原点は変わらない、そんなことも感じた。
取材・文:田中 奈美 取材日:2017年9月8日