参加者インタビュー
Interviewインタビュー 中国から日本に留学し、戸惑いながらも成長し続ける。
レンズ越しに写る彼ら“今”を追います。
心ちゃんって、呼んでください
心(しん)ちゃんは日本への留学を両親に相談した時、最初は反対されたという。東日本大震災のすぐあとだったからなおさらだ。心配するのも無理はない。
それでも心ちゃんはどうしても日本へ留学したかった。
アニメ「名探偵コナン」が好きだということや、中国の元首相、周恩来がかつて日本に留学していたことが彼女を日本に向かわせる。
「周恩来さんはとてもかっこいい!知識もあるし」
女子高生が元首相をまるでアイドルのように慕っていることが原動力になるなんて、少しビックリした。今でも中国ではとても人気があるのだそうだ。
イギリスに留学させたがった親を説得し、8月、ついに彼女は日本にやって来た。
心ちゃんの留学先、島根県松江市は日本海沿いに位置する城下町だ。
観光地であるのに派手さはなく、奥ゆかしい。
江戸時代の自然や景観がのこる情緒的な街並みを歩くと、大きな時間の流れの中にいることを感じずにはいられない。
また松江の冬の天気は劇的だ。
ものの5分で快晴、曇り、雨、あられとどんどん変わり、その日は虹まででた。
風が強いので寒がりの心ちゃんは大変かもしれない。
「日本の学校は黒いタイツをはいてもいいと聞いていたから、中国でたくさん買ってきました」
でも実際は、制服には白いソックスと学校の規定で決まっていた。黒タイツの出番はない。膝が寒そうだ。
中国でお母さんに買ってもらったという青色のロングジャケットと白いマフラーが、心ちゃんをしっかりと寒さから守っている。
自宅から学校までは決して近くはない。自転車、電車、バスを乗り継ぎ通っている。
通学途中、ただっ広い田んぼのあぜ道を自転車で通る。心ちゃんはここでいつも思い切り歌を歌う。
英語が得意な彼女は中国語、日本語、英語の歌、なんでも歌う。例えば日本語の歌なら「名探偵コナン」のエンディング「Your Best Friend」がお気に入りだ。
明るくて人懐っこい彼女はホストファミリーのお母さんとも仲が良い。
ボランティア活動もされているお母さんはとてもオープンな方で、心ちゃんに話しかける口調はまるで本当の家族のよう。よそよそしさは全くない。心ちゃんも安心していることが伝わってくる。
将来は高校の先生になりたいと話してくれた心ちゃんの、日本での留学生活はもうすぐ半分を終えようとしている。
本当におもしろいことはきっと、ここから始まる。