参加者インタビュー
Interviewインタビュー 日中21世紀交流事業に参加された方々に交流を振り返っていただきました
九期生来日
留学生ドキュメンタリーでは、留学生の1年間の留学生活を追いかけ、様々な経験を通じて、成長していく様子やその背景を、取材を通じて描いていきます。今回からは新たに九期生が来日しました。歓迎会で緊張しつつも元気いっぱいの「新入生」たちをレポートします。
第九期生がやってきた
「僕の名前は楊明哲といいます。遼寧から来ました。立命館慶祥中学校・高等学校に通います」
来日歓迎会の直前、31名の中国人高校生たちが国際交流基金のレセプション会場で、自己紹介の練習をしていた。ミニスカート姿で日本の女子高生のような少女、ひょろりとノッポなずんぐり頭の青年、それぞれ個性があふれ出る。
自己紹介を淡々とそつなくこなす子もいれば、長い高校名を覚えきれず、思わずつかえてしまう子もいる。ときどき言い間違えると、照れ笑いがこぼれる。だが、みな真剣そのものだ。
リハーサルが終わり、休憩室に移動すると、緊張していた空気がふと和らいだ。たちまちにぎやかなおしゃべりが始まる。ぴょんぴょんと飛び跳ねる青年もいる。
彼らに話を聞いてみると、実は来日数回目という子が、今年も多い。以前、旅行やショートステイの交換留学で来たことがあるという陳思宇は、富山県の学校に1週間通った。夏に山に登り、雪合戦をしたのがとても面白かったと弾んだ声で話す。
日本のはっぴ風ジャケットを着ていた張楚珺は、日本のアニメが好きでコスプレに興味を持つ。「私は明るいから上手くやれると思う!」ととびぬけて元気な彼女は、「自分の留学生活をドキュメンタリーフィルムに撮りたい」と、意欲を燃やす。
また、父親が日系企業勤務だという林澤宇は、これまで3回、日本に来たことがある。「両親と旅行した北海道はラベンダーが美しかった」と流暢な日本語で語る。彼女は東大志望で、将来の夢は「日中友好事業に貢献すること」だそう。
「日本と中国はとても近いです。もっと関係がよかったら、私たち両国の人民にもよいことがあるでしょう」
でも目下のところ、ホストファミリーと上手く行くか心配だと眉をひそめる。「あなたみたいに善良な人はきっと大丈夫!」と励ますと、「ありがとう!」と満面の笑顔になった。
心配事は「冬でもスカートで生足」?
事前に行われたアンケートでは、滞在先の家族やクラスメートとの関係を心配する声が多かった。また、リハーサル前、卒業生が体験談を語ると、女子生徒の中から「女子はみなスカートなのか」という質問も飛び出た。中国の制服は日本のジャージ風で、特に北方地域では冬場、ズボンの下に分厚い「股引」を穿く。「冬でもスカートで生足」という先輩の回答に、思わず会場がどよめいた。
心配事は尽きないが、特に日本は初めてという学生は、期待と不安が入り混じる。
日本の伝統文化に強い興味を持っているという李婧もその1人だ。「日中では似たところもあるけれど、違いも多いと思うので、それを知りたい」と語る彼女に、日本の第一印象を聞くと、「道などがとても清潔なのはイメージ通りでした。でも、日本人女性はみなお化粧をしていて、思ったより伝統的ではありませんでした」と返ってきた。
中国の学校は校則で化粧を禁じている。また習慣的に社会人でも化粧をしていない人が少なくない。「日本を理解するために化粧をしてみたいです」と、彼女はきらきらとした笑顔で話す。
「漫才で交流をしたい」
そんな話をする青年もいる。小柄でやさしい顔立ちの王志涵だ。中学の三年間、「相声(中国の漫才・落語)クラブに入っていたそうだ。彼が通う高校には、残念ながら漫才クラブはない。でも「中国で習った漫才を披露して、友達を作りたい」と大きな瞳を輝かせる。
そうこうしているうちに、いよいよ本番の時間がやってきた。集合の号令におしゃべりがぴたりとやみ、粛々と入場してゆく。自己紹介が始まれば、皆緊張した面持ちながら、リハーサル通り、堂々とこなした。
次に来賓の挨拶が続く。受入れ校の先生が、中国からの先輩留学生の活躍エピソードを披露しつつ、「ぶつかることもあると思うけれど、がまんしないで心を開いて話すこと」と話をしたとき、生徒たちの頭がウンウンと縦に小さく揺れた。
彼らは翌日には、全国各地の受入れ校へと散っていく。今年も、31名の熱い挑戦が、始まった。