参加者インタビュー
Interviewインタビュー 日中21世紀交流事業に参加された方々に交流を振り返っていただきました
一期一会の精神で
遼寧省瀋陽市から立命館宇治高校に留学中の李彩維さん。留学生活も残すところ2か月を切った6月初旬、李さんを訪ねた。最初のインタビューから5か月経った「その後」を聞いた。
理科コースのエース
平等院などの世界遺産や源氏物語ミュージアム、特産品の宇治茶で知られる京都府宇治市。京阪宇治駅前からバスに乗り、日本最古クラスと言われる宇治橋を経て約20分。緑まぶしいキャンパスが広がっていた。
広いグランド横の曲線を描く校舎の中をぐるり歩いて、李さんの学ぶ教室に。化学の授業が終わった休み時間、教卓で教師と授業について熱心に話す生徒たちの中に、彼女の姿があった。
「クラスメートにも頼られる存在で、よく勉強を教えたりしているようです。何事に対しても一生懸命に取り組み、努力する生徒です。目標設定が明確なので、今、何をしなければいけないかが分かっているのでしょう」
とは、3年になってからの担任で数学担当の詫摩周平先生。
クラスメートで、寮でも向かいの部屋に住む芦田美那(びいな)さんも、「私も、勉強の分からないところを教えてもらったりしています。彩(さい)(李さんのニックネーム)は頭が良くて、定期テストの全体の平均点を上げてしまうんですよね」と言う。
優秀ぶりは留学早々に知れ渡った。
「飛び級で本校2年生に入り、最初の物理の小テストでいきなり学年トップでした。理科コースのエースです。また、彼女は英語も日本語も言語を完全にツールとして使いこなしています。グローバルな人材というのはこういう生徒のことを言うのだろうと思いました。ほかの生徒たちに刺激を与える存在です。もっと本校にいてほしいというのが正直なところです」
理科コース主任の渡辺儀輝先生は手放しで褒める。
部活をやりきる
勉学以外にも部活動に積極的に取り組んだ。周囲の反対を押し切って入部したチアリーディング部。初めての経験ばかりだったが、3月には西日本大会で演技をすることができた。5月中旬に怪我をしてしまい、自身が体を動かすことはできなくなってしまったが、部員として最後まで参加する。きつい基礎トレーニングを続けたこと、互いを支えあいながら円陣を組んだこと、怪我のため運動部に籍を置きながら見学せざるを得なかったもどかしさ、それでも部活をやりきったこと…。チアリーディング部で重ねた時間は彼女の胸に多くのものを刻んだはずだ。
友チョコ、甲子園…さまざまな「日本」体験
「季節」も「京都」も楽しんだ。お正月にはお節や年賀状だけでなく、ショッピングモールの行列に加わって福袋をゲットする体験もした。京都御所の桜、学校の寮近くの三室戸寺の四季折々の美しさ…。バレンタインには「友チョコ」を交換しあった。
「チョコを手作りしてくる子もいて、日本の女子高生って“女子力”が高いなぁって思いました」
ペットボトルのキャップまで分別する資源ゴミの出し方や、春の選抜甲子園での母校応援でも「日本」を感じた。留学前からお寿司は大好きだったが、たくあんの海苔巻を京都に来て初めて口にして「意外といいな」と思ったり。スイーツでは、抹茶ぜんざいがお気に入りになった。
お気に入りと言えば、京阪電車もそのひとつ。
「めっちゃ京阪が好きです。電車賃も安いし、車両もきれいやし!」
最初は戸惑ったという関西弁も、今は自然に使いこなす。
日本に来てから好きになった言葉を聞いてみた。
「便利な言葉だなと思ったのは、“適当”。ちょうどよいとか正しいという意味だと思ってたから、みんなが使う“テキトー”ってどういう意味なんやろって最初は思いました」
関西弁では、語尾につける“~やんな”が好きだという。そして、一番好きな言葉は、“一期一会”。
「ここで出会った人の中では、もう二度と会えない人もいると思います。中国へ帰ってから後悔しないよう、今を大事にしたいと思ってます」
まっすぐに前を見つめる目はまぶしいほど。
将来の夢は、生物分野の研究者だ。中国へ戻り、高校を卒業した後、東大か京大への進学を目指す。一回り大きく成長した彼女が、研究室で白衣を着て研究に取り組む姿が目に浮かんでくる。
取材/文:須藤 みか 取材日:2015年6月2日