Voice ~参加者の声~ 今吉弘哉さん
心連心と共に
名前
今吉弘哉いまよし ひろや さん
プロフィール
2012年から鹿児島県立武岡台高等学校で英語教諭として勤務。2013年、心連心第八期生の受入れから当校の国際交流を担当し、それをきっかけに中国語を独学で勉強。2016年3月には「高校生ふれあいの場訪問事業」の参加者として中国「長春ふれあいの場」を訪問、そこで第八期生の崔舒淵さんと再会を果たした。
鹿児島県立武岡台高等学校は本年度(平成28年度)で創立30周年を迎える鹿児島県内でも比較的歴史の浅い学校です。心連心の中国高校生長期招へい事業において,第5期生から現在の第11期生まで7名(全て女子生徒)を受け入れており,本校の歴史のおよそ1/4は心連心と共にあります。
本校で学ぶ心連心の留学生への洗礼の一つに,来日直後に開催される体育祭が挙げられます。体育祭のような学校行事を体験したことのない彼女らにとって,本校での集団演技も非常に新鮮でショッキングなのだそうです。また,ロードレース大会,修学旅行,クラスマッチ,文化祭などの中国では珍しい行事に対しても,他の生徒同様に準備段階から積極的に参加して日本の高校生活を満喫しています。
年間を通しての朝学習(午前7:40から行われる朝補習で,考査期間中は朝自習)は九州ではお馴染みですが,本校への留学生たちにもお馴染みのようです。「中国でもやっています。」と平然と受け入れて参加しています。その他の学習面においても,学習に対する彼女たちの態度はまさに向学心に燃えており,中国代表としての誇りや気高さ,中国の教育水準の高さなどを感じさせます。一方,祖国では最優秀クラスの成績を収めている彼女らですが,さすがに来日当初の言葉の壁や,文化・慣習等の壁を越えるのには一苦労しているようです。しかしそこは,中国代表の意地なのでしょう。不屈の精神力で不断の努力を積み重ね,全員が乗り越えていっています。
さて,彼女たちが楽しみにしているのは,学習内容そのもの以上に(というと語弊がありますが)中国と日本における高校生活の違いや共通点を体感することや,日本の高校生との交流ではないかと感じています。部活動へも意欲的に参加していますが,日本の伝統文化への興味を示す生徒が多いことから,特に茶道部は人気が高いです。飲茶とは異なる茶の湯の世界,そして浴衣姿でのお点前披露に強く心惹かれるようです。6月開催の文化祭では浴衣姿とともにお点前を披露する留学生が多く,綺麗な浴衣に身を包んで嬉しそうな表情を浮かべるのを見ると,万国共通の女の子の喜びが垣間見える気がします。緊張感が次第にほぐれて生活のリズムが構築されてくると,日本の女子高生らしさも出てきて,女子トークで盛り上がるのも万国共通なのかもしれません。
また,一般の日本人生徒がはるかに及ばないような高度な英語力を持っているのも本校で学ぶ心連心の留学生たちの特徴です。授業中に英語を発する機会があると,その発話力の高さや思考・内容等の深さに教室には嘆息やどよめきが溢れます。特にこの数年間の傾向として,本校の特色の一つである外国語系のクラスに所属するため,日本人生徒の良きお手本となってくれています。留学生からは英語や中国(語)を教えてもらい,留学生には日本(語)を教えることで,お互いに良好な関係を構築しています。第十期生の張戈さんは県の英語プレゼンテーション大会の準備で八面六臂の大活躍をしてくれましたし,第11期生の周躍さんを迎えたわがクラスでもすでに「次の席替えでは周ちゃんの隣になって英語を教えてもらう」などの声も聞こえてきます。
英語力の高さに加え,本業の!?日本語学習については,1月に行われる「鹿児島で世界を語ろう―外国人による日本語スピーチコンテスト」にも毎年のように参加しており,来日数ヶ月で内容面も発話面も非常に見事なスピーチを披露してくれています。発表を聞く機会を得た第八期生の崔舒淵さんのスピーチには,内容や表現力の愛らしさに思わず笑みがこぼれ,第十期生の張戈さんの時は溢れる優しさに涙したのを記憶しています。なんと張戈さんは優秀賞までいただきました!
このような多くの気づきと感動を与えてくれる心連心の留学生たちに感謝の念を抱かずにはいられません。また,帰国後の彼女ら(彼ら)がさらに大きく成長して,両国をつなぐ大きくて強固な懸け橋になってくれることを切に希望します。
鹿児島県立武岡台高等学校 教諭
今吉 弘哉
2016年12月