Voice ~参加者の声~ 王 玥さん
2019年日本企業文化紹介セミナー感想談
名前
王 玥ワン ユエ さん
プロフィール
1992年生まれ。武漢出身。
高校2年生の時日中交流センターの心連心プログラムの第3期生として1年間日本の和歌山県にある県立高校に留学。その後東京にあるお茶の水女子大学の文教育学部に進学し、東アジアの異文化差異を中心に勉強していた。課外では大学の公式弓道部に所属し、練習や試合に力を注いだ。また、日中両国の学生の相互理解を深めるための学生団体にも参加した。大学3年生の時に交換留学制度を利用しチェコのプラハにあるカレル大学に1年間留学。
2017年4月より株式会社ブリヂストンに入社し、現在一つの部署を経て加工品部門の海外事業企画課で海外グループ会社の統括、管理業務に携わっている。
昨年12月の仕事帰り、何気なくSNSを確認すると、とても懐かしい名前の方から一通のメッセージが届いていました。それは私が高校生の時、日中交流センター主催の高校生長期招へい事業に参加した時、面倒を見てくださっていた職員の方からで、私たち3期生は当時から「先生」と呼んで、とても仲良くさせて頂いていました。メッセージの内容は、「中国の大学生に日本の企業、就活事情の講演をしてほしい」との依頼でした。高校の一年間の日本留学のお陰で、「日中の架け橋になりたい」という夢を抱き、日本で進学、就職した私にとって、非常に嬉しい、ありがたいオファーで、二つ返事でお引き受けしました。
こうして私は2019年の12月17-18日の二日間で、国際交流基金の主催により、ふれあいの場が設置されている湖南大学(長沙市)、そして設置予定となっている華中師範大学(武漢市)という二つの大学で、日本企業文化紹介セミナーの講師をしました。武漢は、私の実家があり、生まれ育った故郷です。また長沙も武漢から近く観光で何度か行ったこともあり、さらに湖南大学には試験を受けるために一度訪問したことがあります。今回のイベントは思い入れのある場所での開催となっており非常に不思議なご縁を感じました。
今回のセミナーで、私と一緒に講師を担当されたもう一人の方は日本貿易振興機構(JETRO)武漢事務所駐在の片小田廣大さんでした。片小田さんは、日中間の経済促進に非常に情熱的な方で、武漢の歴史や社会について、恥ずかしながら、武漢出身の私よりも大変熟知されており、興味深い話をたくさんしてくださり、非常に勉強になりました。
2日間のセミナーは日本語専攻の学生が中心に参加しており、各学年の学生が参加していました。講演会は、最初に片小田さんから「平成30年の日本経済と今後の展望」をテーマに、学生たちに、日本近代史の中で日本経済を大きく変えてきた出来事を振り返りながら、日本企業の発展と変遷を説明しました。そのあと私が、日本の就職活動のスケジュールと方法、日中企業の比較を主要なトピックとして、自分がどのように就活をしたか、試験や面接で感じた大事なポイント、そして今の社会人生活で感じている日本企業の特徴等、主に自分の実体験の内容を強調して話をしました。質疑応答時に学生との交流の中で、皆さんの関心が非常に多岐にわたると感じましたが、特に日本社会の残業問題、外国人の働きやすさ、日本企業の上下関係についての問題が多かったです。そういった問題の中で実際に課題だと感じている点、そして徐々に改善されていると感じる点、それぞれ答えてみました。
学生と交流をして思ったのは、学生は企業に選ばれる立場でありながら、企業も学生に選ばれる立場にあるので、中国企業は発展の勢いが強くなり、能力重視の高賃金、福利厚生などの条件で世界中の優秀な人材を獲得しようとしています。一方で、日本企業はやはり保守的な印象を持たれています。このように、学生にとって選択肢が非常に増えてきた今、世界中の優秀な人材に日本企業で働くメリットをより強く感じさせるために、日本企業はスピードを持って、変化と進化をし続ける必要があると感じました。
就職の質問以外、留学生活への心配、日本で生活する時の人間関係の心配、将来の人生設計に悩んでいる等の相談も受けました。私自身も同じような経験があるので、自分なりの意見をたくさん彼らに伝え、少しでも力になれればと思いました。
JETROの片小田さんとの会話の中で、内陸である武漢と長沙も、中国沿岸部と比べて日本企業の拠点が少ないため、日本に関する情報も日本に興味を持つ人もまだ少ないというものがありました。ただ武漢も長沙も、今内陸の最も勢いのある都市であり、特に武漢はここ10年、日本との貿易も急速に拡大しているそうです。学生の数が多い都市でもある武漢と長沙で、これから学生同士、学校同士の日中交流もより活発になることを期待しています。
今回のセミナーに参加した時期、ちょうど私は会社の働き方改革のプロジェクトにも参加していました。学生がどういう会社で働きたいのかを改めて感じられて、このプロジェクトのヒントにもなりました。また、日中交流について、改めてグローバル、経済、教育等、多様な観点から考えさせられ、日中交流の可能性、そして私たちができることはまだまだ沢山あると強く思いました。
そして、日中交流センター心連心プログラムの卒業生として、自分の故郷で自分の経験を学生に伝えられる機会を頂けたことが何よりもうれしく、心より感謝しています。高校の一年間の日本留学を終えたあと、私は日中交流センターのインタビューで「日中の架け橋になりたい」と話しました。この留学の経験が私に初めて夢と言える夢を与えてくれました。卒業して十数年も経った今、それが変わっていなかったと再認識できました。今後もその初心を忘れずに、一社会人として微力ながらも、日中交流に協力、貢献できたらいいなと思っています。
ブリヂストン(株)
化成品販売部 海外事業企画課
王 玥(心連心3期生)
2020年6月28日