Voice ~参加者の声~ 李珂さん
私のボランティアとしての歩み
名前
李珂 さん
プロフィール
2001年2月生まれ、雲南省楚雄州楚雄市出身。
2019年、雲南師範大学日本語学部に入学。同年「昆明ふれあいの場」に参加し、ボランティアとして活動を開始した後、9月に大阪府立大学の学生と「箱庭大阪」を共同開催。
2020年3月、西南学院大学の学生と「きんしゃい!福岡お祭りツアー」を共同開催。
2021年8月、昆明ふれあいの場の責任者に就任。10月に名古屋外国語大学の学生と「おうち居酒屋」を共同開催。
「光陰矢の如し」とはよく言いますが、月日が流れるのは早いもので、昆明ふれあいの場と出会ってから、知らず知らずのうちにもう3年が過ぎました。大学1年生の頃に思い描いていたとおり、今の私は日本と深い絆で結ばれています。
過去を振り返ると、2000年代に生まれた私たちの世代が日本に触れる機会と言えば、やはり日本のアニメを観ることだったと思います。私は子どもの頃から『名探偵コナン』を観るのが好きでした。しかし、当時の中国のテレビ局では台湾吹替版を放送しており、アテレコや手続きに時間がかかる関係上、日本語版の放送回が多くありませんでした。そこで、私はインターネットで「後追い視聴」をするようになり、『ちびまる子ちゃん』『しゅごキャラ!』など話題の人気作品にも徐々に親しむようになりました。ちなみに、この「後追い視聴」の習慣は今でも続いています。このように幼少期から日本のアニメが好きだったことが、大学受験で日本語学部を選んだきっかけにもなりました。
大学に入学した後、五十音図から少しずつ勉強を始めるものとばかり考えていた私ですが、思いがけないことに、日本語に触れてから1週間も経たないうちに、突然先生からお話があり、北海道交流団のおじいさんおばあさんたちを相手に、キャンパス内を案内することになりました。幸い、長年日本のアニメを観ていたので、おばあさんたちとは何とかコミュニケーションを取ることができました。しかし、その頃の私は敬語はもちろん、簡単な自己紹介もままならない状態で、自分に対して男性の一人称を使うなど、色んなヘマをやらかしてしまい、今思い出しても恥ずかしい限りです。それでも、当時一緒のグループになったおばあさんは、私が聞き取れるようにゆっくり丁寧に話してくれたり、言葉の間違いを指摘してくれたり、また気まずい場面でも「大丈夫よ、とてもかわいいと思うわ」と励ましたりしてくれました。日本のお菓子をお土産にいただき、本場の日本のお菓子を味わったのもその時が初めてです。最後にはおばあさんとメールアドレスまで交換し、本当に良い思い出になりました。ただ、唯一残念だったことを挙げるとするなら、その時に話したい内容をうまく伝えられなかったことかもしれません。そして、この出来事がきっかけとなり、日本語をしっかり勉強しなければならないという思いが強くなりました。また、このような学習生活の中で、日本語だけでなく、日本についてもっと知りたいと考えている自分にも気づきました。
当時の責任者である先輩が私たち1年生のところにやって来て、壇上で「昆明ふれあいの場」に関する宣伝と紹介をしてくれたのは、まさにそんな頃です。その舞台下でさまざまなイベントの写真を見るうちに、沸々とした感情がこみあげてきました。日本の友人とのふれあい、ふれあいの場に置いてある多くの日本語原版の書籍、数々のおもしろそうな文化イベントなど、まさに私が少し前に思い描いていた場面が繰り広げられていたのです。夢にまで見たチャンスを逃す手はありません。私は迷うことなくふれあいの場に参加を申し込み、ボランティアとしての歩みを本格的に始めました。
ボランティアに参加してから間もなく、先輩からうれしいニュースの発表がありました。日本の大阪府立大学のチーム『ええじゃないか』に所属する大学生が昆明に来て、1週間の交流イベントを行うことになったのです。私は早速このイベントに参加を申し込み、お寿司作りのグループに入りました。イベントの2日前、チーム『ええじゃないか』のみんなが教室にやって来て、一緒にゲームやおしゃべりをしながら、色んなおもしろい大阪弁を教えてもらったのですが、方言の早口言葉に挑戦する様子にみんなが「大笑い」したことを今でも覚えています。そしてイベントの前日になり、私たちのお寿司グループを含め、各グループとも最後の準備に追われました。あんなにたくさんの準備作業をしたのは初めてだったので、本当にバタバタしました。先輩や日本の仲間の根気強いサポートのお陰で、いなり寿司初体験の私でもお寿司作りの楽しさを存分に味わえたこと、またイベントに参加した学生たちに同じ楽しさを伝えられたことを本当に感謝しています。
2020年になり、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、昆明ふれあいの場の交流イベントも中止せざるを得ない状況が続きました。しかしその後、対面授業がオンライン授業に移行されたことに伴い、1年近く休止していた大学生の交流イベントをオンライン形式で再開することになりました。西南学院大学の『西南【にわか】ガールズ』との交流では、単なるボランティアから企画の共同担当者になるチャンスを得られたのですが、うれしい反面、これまでにない形式での開催に心の中は不安で一杯です。パソコンの画面越しの交流ということで、日本の学生と実際に対面するわけではないため、ぎこちない雰囲気になり、場が盛り上がらないのではないかなど、色んな心配事が頭の中を駆け巡りました。しかし、12月に最初のビデオ通話をした時、そんな私の心配が少し和らぎました。アイスブレイクをきっかけにリラックスした雰囲気でおしゃべりが始まり、異国文化に関する体験や疑問について、みんな興味津々に交流することができたのです。とはいえ、イベント当日もビデオ形式での実施になるのだから、現場にボランティアしかいないイベントで、以前のように参加者を満足させることが本当にできるのだろうか。そんな不安がまたすぐに脳裏をよぎります。間もなくして、イベントを開催する3月になりました。予想していたとおり、新型コロナウイルスの影響により、海の向こうにいる日本の仲間と私たちはリモートでつながるしかなく、1回当たりの参加人数も40人前後に制限されました。しかし、だからこそよりおもしろいイベントになるように、そして参加者に充実した体験をしてもらえるように知恵を振り絞りました。人数制限があるのなら、イベント期間を長くし、たくさんの人に参加してもらえるようにすればいいのです。そこで、最終的に週末の全期間にわたってイベントを行うことにしました。みんな忙しくててんてこ舞いでしたが、頑張って企画した内容が一つずつ実現していく様子や、参加者のうれしそうな笑顔を目の当たりにし、心の奥からこれまでにない満足感が湧き起こりました。
ふれあいの場のイベントに参加したことで、視野が広がり、日本語や日本に対して抱いていた好奇心や知識欲が満たされただけでなく、気の合う親友もたくさんできました。彼らの多くは、私と同じように大学生交流事業や日本文化に対して強い情熱を持っています。このような出会いの場を持てたこと、そして日本の仲間と知り合えたことがとてもうれしいです。海を隔てた国同士、無数の人がいる中で、かけがえのない方たちに出会えたことは、今思い返してもとても不思議で、本当に幸運でした。
現在は、10月に実施した新たな大学生交流イベント「おうち居酒屋」を終えたばかりです。今回は私がリーダーとしてイベントを取りまとめました。準備期間は苦労の連続で、新たな課題にもたくさん直面しましたが、みんなのサポートのお陰で、最終的にスムーズにイベントを進めることができました。イベントの中では友情や責任感、自分の役割が得られたほか、日本語を学び、日本を知るにつれて、ますます興味も高まったように思います。今後もこのような取り組みを続け、多くの知識を吸収しながら、日本語コミュニケーション能力を向上させていきたいです。そうすれば、日本人の友人もさらに増えることでしょう。夢の実現に向けて、これからも私はもっと努力をします!
雲南師範大学
李珂
2021年12月16日