参加者インタビュー
Interviewインタビュー
日中21世紀交流事業に参加された方々に交流を振り返っていただきました
Vol.69
心連心15期生、3か月目からのチャレンジに向けて(上)
「心連心:中国高校生長期招へい事業」が約4年ぶりに再開し、15期生9名が来日して2か月あまりが過ぎた。2023年12月、3か月目研修が埼玉県の国際交流基金日本語国際センターで開催され、日本各地の高校で学ぶ15期生が集合した。
この2か月、彼らは日本でどのような体験をし、どのように課題に直面したか、研修初日に取材した個人発表とそれぞれの体験談をオムニバス形式で紹介する。
[1] 日本好きの両親の影響を受けて――Wさんの話
個人発表でトップバッターをつとめたWさんは上海出身で、長崎県の高等学校に通う。発表では、長崎では靴下に穴があいたことを「じゃがいもができる」と言うなど、ユニークな方言を流暢な日本語で紹介した。学校はミッションスクールで毎朝、礼拝から始まるという。また部活は柔道部に入ったというアクティブ派でもある。
発表の後には質問タイムが設けられた。最初はなかなか質問の出ない生徒たちに、先生がヒントを出して自分でも考えてみるよう促す。生徒たちにとって、質問を考えることもコミュニケーションの学びの場となった。
Wさんは「週末はどうしていますか?」と質問を受け、「買い物に行ったり、友人と遊びに行ったりしてます」と笑顔で回答。すっかり日本も生活になじんでいるようなWさんに、日本に興味をもったきっかけを聞いた。
――日本にはどのようなきっかけで興味を持ちましたか?
Wさん 実は父は日本で3か月間研修したことがあり、そのとき日本に興味をもったそうです。母もその影響をうけて、私の家では家族全員が日本のアニメなどを見ます。日本へも何度も旅行していて、東京、京都、大阪から四国全部と福岡、沖縄に行きました。そのような環境だったので、私も小さいころから日本に興味があり、中学校から日本語の勉強を始めました。
――日本で生活してみていかがですか?
Wさん 長崎は初めてですが孔子廟などがあり、歴史的にも中国との関わりも深く、とても楽しいです。友達もできましたし、これからもっと地元のイベントにも参加したいですね。
――将来の夢はありますか?
Wさん あまり明確ではないのですが、父の仕事がIT関連なので、私も日本の大学に留学して情報学を勉強できたらいいなと思っています。
[2]中国の東北地域・瀋陽から北海道へ――LさんとSさんの話
LさんとSさんはともに遼寧省瀋陽の出身、留学先は二人とも北海道の高等学校に通う。
個人発表で、Lさんは北海道の観光地を紹介、学校では古典の授業で、俳句や川柳を教わることが楽しいと言う。部活は音楽部に所属し、はじめてのバイオリンにも挑戦しているそうだ。
一方、Sさんは寮のある札幌の商店街で食べた抹茶アイスや寮近くのスーパーなど日常生活を紹介、北海道の冬について「雪も風もすごく、このあいだは、強風で髪が全部抜けてしまうかと思った!」と話し、笑いをとった。
LさんもSさんも中国の高校では日本人教師との交流があるが、日本での生活は初めてとなる。そんな二人に日本の高校での体験について聞いた。
――日本の高校には慣れましたか?
Lさん そうですね。中国に興味を持ってくれて、交流したいと思ってくれる生徒がたくさんいます。でもまだ少し、距離はあるかもしれません。
Sさん 僕が通う高校では、外国語の授業で中国語かフランス語を選択するので、中国語を話せる生徒もいます。また寮の隣の部屋の友人は香港に10年以上住んでいたことがあり、比較的溶け込みやすい環境です。
クラスメイトとはお互いに得意な分野を活かし、授業のわからないところを質問しあったりして仲良くなりました。僕は三角関数が得意でよく質問を受けますし、逆に二項分布がわからなくて聞いたりもします。あとはゲームの話もします。中国のゲームメーカーの「原神」は、日本の高校生にも人気です。
――日本と中国でギャップを感じることはありますか?
Lさん 日本は話し方があいまいで、何を伝えようとしているのかよくわからなくて困ることがあります。
Sさん 日本人の話し方はやさしいと思います。中国では特に男性同士はリアクションが大きくて、ジャンプして相手の肩を強くバン叩くというようなこともします。そのようなコミュニケーションの違いを感じます。
――これから残り7カ月でやりたいことはありますか?
Lさん 週末を一緒に過ごすような仲のよい友達を作れるといいなと思います。また、いろいろな人とたくさん交流するのもいいですね。音楽部でバイオリンを習うのもすごく楽しいです。
Sさん 僕は国際交流部ですが、弁論部にも入りたいと考えています。日本語の勉強にもなりそうです。
※「心連心15期生、3か月目からのチャレンジに向けて(下)」に続く
取材・文:田中奈美 取材日:2023年12月6日