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Voice ~参加者の声~ 余 逸文先生

我々の宝物:「アモイふれあいの場」

名前
 余 逸文   ヨ   イツブン  先生

プロフィール
1969年、安徽省蕪湖市生まれ。1992年、アモイ大学外国語学部日本語学科を卒業後、同大学に残り教員となる。1994年、国際交流基金北京日本学研究センターの「教師研修会」に参加。2001年、金沢大学大学院文学研究科を卒業し、日本文学修士号を取得。日本の「国費留学生」、客員研究員などの身分で名古屋大学、三重大学、国際交流基金日本語国際センター等にて研究に従事していた経歴も有する。現在は、アモイ大学嘉庚学院日本言語文化学部の学部長を務める。長崎国際大学客員教授。

中国南東の沿岸部に位置するアモイは、中国で最も早く改革開放を実施した経済特区として、国際貿易の重要拠点であるものの、北京、上海、広州などグローバル化が著しい文化の中心地に比べると、郊外の辺鄙な場所にある文化香る小さな町という印象のほうが強いです。国際貿易人材に対するニーズから、外国語を学ぶ人が多いアモイでは、日本語が自然と英語に次いで人気のある言語になっています。しかも、日本の漫画・アニメ文化が中国の若い世代から大きな注目を集めていることもあり、日本語専攻の学生から日本語専攻でない学生、さらには普通の社会人に至るまで、日本文化が好きで日本語を学ぶ若者が星の数ほどいます。ただ残念なことに、日本関連の文化交流活動については、数少ない高等教育機関の日本語学科が日本文化に関するイベントをたまに開催しているのみで、アモイだけでなく、福建省全体を見てもほとんどない状態でした。そのため、日本語の学習者・愛好家たちは、長らくの間、「リソース不足」の中で「自己流の独学」を強いられてきたのです。その後、2018年になって、大学OBや中日友好関係者が熱心に推薦してくれたこともあり、国際交流基金日中交流センターがアモイ大学嘉庚学院において各種調査・視察を行い、その結果、本校と共同で「アモイふれあいの場」を設立するというお話をいただくことができました。当時の私たちの気持ちを振り返ると、「日照り続きの中、ついに待ちわびた恵みの雨が降ってきた」、そんな喜びで一杯だったと思います。そして、数か月にわたる入念な準備期間を経て、安倍前首相の7年ぶりの訪中という重要な時期にも当たる2018年10月24日、阿南惟茂前駐中国大使、在広州日本国総領事館の石塚英樹総領事、国際交流基金日中交流センターの塩澤雅代事務局長、ならびに数名の在日中国人の方、アモイの日系企業の代表者、アモイにある複数の高等教育機関の教師・学生代表など数百人の招待客が見守るなか、本校においてアモイふれあいの場がついにオープンしたのです。

写真写真を拡大アモイふれあいの場開所式の記念写真

アモイふれあいの場が私たちの待ちわびた「恵みの雨」であるとするならば、真っ先にその象徴として挙げられるものは、ふれあいの場専用の図書館であるといえます。ご存知の通り、中国国内の日本語学習者にとって、最も不足しているものは日本語原版の書籍や資料などです。中国の書店や学校の図書館は、ほとんどが日本語学習者向けの教科書や試験教材しか取り扱っていません。一方、小説、雑誌、新聞などその他書籍に目を向けると、日本語原版のものは数量が非常に少ないため、価格が高く、調達先も限られています。しかし、アモイふれあいの場が開設され、国際交流基金の支援を受けて専用の日本語図書館が建てられてからは、教員や学生、さらには一般市民もここに来て、さまざまな日本語書籍を借りて読んだり、読書会などのイベントを開催したりできるようになりました。この小さいながらも立派な日本語図書館は、日本文化愛好家の交流や日本文化の紹介を行う、本当の意味でのふれあいの場になっています。

写真写真を拡大ふれあいの場の専用図書館

また、ふれあいの場が主催する多くの文化交流活動についても、まるで「恵みの雨」のように、日本語の学習者・愛好家たちの日々の学習と生活に潤いを与えています。日本映画祭、テーマの異なる日本文化サロン、寿司作り大会、日本の歌曲による紅白歌合戦、日本の観光コースの企画大会、中日茶道交流会、日本アニメ・ドラマのアフレコ大会、沖縄太鼓のパフォーマンス、中日大学生交流活動を含め、定期・不定期にかかわらず、日本文化を題材にしたさまざまな交流活動が開催されるなど、日本語学習者や日本文化愛好者が日本文化に間近で触れて体験したり、学習内容を実践したりする場を提供することで、参加者の学習意欲や日本文化に対する理解を向上させるとともに、これまで学んできた日本語の知識をムダなく実用化することにもつながっています。

写真写真を拡大日本茶会

アモイふれあいの場の設立と運営は、日本語学習者や日本文化愛好家のために温かい大きな家庭を築くことにもつながっています。というのも、アモイは日系企業や日本人が少なく、本校にいる日本人留学生も多いとはいえないことから、日本語の学習者・愛好家たちが日本人と接する機会はごく限られ、学生はもちろん、特に一般市民の学習者が日本語を使って交流できる場はほとんどありませんでした。しかし、アモイふれあいの場が始動して以降、さまざまな革新的な手段や多種多様なニューメディアにより、その活動が広く宣伝されています。これにより、以前は各地に分散し、知り合うことができなかった多くの日本語愛好家やアモイで暮らす日本人がふれあいの場に集まり、それぞれの学習や生活について語り合ったり、一緒にイベントに参加したりするなど、日本語と日本語文化を媒体としたコミュニティが形成されています。さらに、中日大学生交流活動を通じて、中国の学生たちが日本にいる友人を見つける場も設けられました。この活動では、中日両国の学生が協力して交流イベントを企画し、運営するなかで、深い友情が芽生えた結果、短い時間を共に過ごした後も連絡を取り合うなど、一生の友人関係が育まれています。

写真写真を拡大日本語コーナー

昨年以降、新型コロナの影響もあり、アモイふれあいの場においても以前のような対面イベントを開催することができない状態にあります。しかし、ボランティアたちが知恵を出し合い、ネットを利用した新たな方法を模索するなど、現在もバラエティ豊かなイベントを多数開催しています。ふれあいの場に集う、日本文化を愛する人々の熱い想いは、コロナ下においても決して冷めることはありません。

一方、ふれあいの場に対する私の熱い想いは、多岐にわたります。まず、日本語教育に携わる者として、このようにより良い形で日本語教育や日本文化の発信を行うことができる、条件の整った教育の場ができたことをとてもうれしく思います。次に、設立に際して多大な支援をしてくださったOBや友人の好意と期待を裏切らないようにするため、私にはアモイふれあいの場の中心的な責任者として、人一倍の重い責任があると感じています。そして、ここでの活動は、学業や仕事の面で私に多くの支援やサポートをしてくださった国際交流基金に対する私の感謝を表すことでもあります。日本語学習者・日本語教育者としての私の人生において、国際交流基金は常に頼れる大切な存在であるといっても過言ではありません。そのため、私は今後も最大限の責任を持って、アモイふれあいの場の運営に尽力していくつもりです。

写真写真を拡大中日学生交流活動チームメンバー

2021年3月1日
アモイ大学嘉庚学院日本言語文化学部
余 逸文

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