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Voice ~参加者の声~ 徳永 潤さん

タコ焼きが繋ぐ日中交流

名前
徳永 潤とくなが じゅん  さん

プロフィール
1995年生まれ。宮崎県出身。高校卒業後ニュージーランド、ドイツに遊学。2017年近畿大学に入学。大学では中国語を専攻し、遼寧大学に1年間留学。帰国後ロシア派遣事業に参加し、そこで出会った仲間と関西インカレチーム【関西時代】を結成、国際交流基金日中交流センター主催の大学生交流事業に応募して採用となる。このチームで2019年3月に浙江工商大学「杭州ふれあいの場」でイベントを実施した。同年8月、アジア人材育成プログラム『リードアジア2019』に参加。9月より大学を2年間休学し、外務省在外公館派遣員として北京の日本大使館に勤務。2021年9月復学予定。

「ついに来た!」降り立った浙江省杭州市は生憎の曇り空でしたが、私含めた【関西時代】メンバー6人の顔は晴れ晴れとしていました。引率の諸田さん(国際交流基金日中交流センタースタッフ)の顔には「これからが大変だよ」と書いてあったように思います。諸田さんの心配をよそに中国到着の記念写真をみんなで撮り、私たちの興奮は高まる一方です。私にとっては二度目の中国。また戻ってこられたことが嬉しく、日本での4ヶ月の準備期間も報われた気がしました。空港にはカウンターパートの浙江工商大学の学生が迎えに来てくれており、みんなでバスに乗り込み市内へと向かいました。連絡ツールであるWechatでは何度もやり取りしていましたが、実際に顔を合わせたことでようやく最後の距離が縮まった気がしました。これが怒涛の7日間の幕開けです。

写真写真を拡大 杭州空港到着時の記念写真

私たちは5日目に『関西万物博覧会』の開催を予定していたので、準備期間は3日間のみ。会場を下見し、買い出しに走り、料理の試作を繰り返しながら小道具も作成していきます。準備の合間に大学の日本語授業で関西弁をレクチャーしたり、イベントのビラ配りを校内各所でゲリラ敢行したりと大忙しです。夜は連日遅くまで踊り子あめちゃん(天野さん)指導のもと、ソーラン節をみんなで練習しました。疲れた時にはカウンターパートが絶妙のタイミングで注文してくれた珍珠奶茶(タピオカミルクティー)でひと息つきます。忙しくも楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。イベント当日は前日までの雨が嘘のような快晴で、600人もの来場者が「杭州ふれあいの場」に足を運んでくれました。来場された方には私たちが工夫を凝らした『関西万物博覧会』を、五感で十分に堪能してもらえたと思います。詳しくはぜひ私たちの「ふれあいの場」レポートをご覧ください。(URLは本文最後に掲載)

写真写真を拡大初日の歓迎会の様子。CPと浙江料理を堪能

「近くて遠い国」というのが、私が元々持っていた中国への印象です。大学で中国語を専攻したのはいくつか理由がありますが、巨大で未知な隣国を、自分の目と耳と心で感じたいという好奇心が中国へと足を踏み出す大きな後押しになったと思います。中国に飛び込んで多くの中国人と交流する中で、「近くて遠い国」が「また来たい国」へと変化しました。中国留学を終えてからも中国に戻る機会を探していましたが、そんな時に見つけたのが日中交流センター主催の大学生交流事業でした。

写真写真を拡大イベントの準備の様子

「杭州ふれあいの場」で実施した大学生交流を経験した今思うことは、本当に素晴らしい事業だったということです。自分たちでイベントをゼロから企画する中で、自国の文化を改めて見つめ直し、同時に中国人の嗜好等もよく考える必要があります。カウンターパートの中国人学生とイベントの準備を進める中で、うまくいくこともあれば躓くこともありました。壁にあたればその都度解決策を探りましたが、やはり何事も対話が重要だと痛感しました。国も言語も習俗も異なる私たちですが、互いに何とかしたいという気持ちがあれば、必ず解決策を見つけることができました。全てがお互いに100%満足する解決策とは限りませんが、尊重も譲歩も、一緒にやっていくためにはどちらも必要です。例えば私たちの衝突といえば、タコを使い切った際にタコ焼きの中にイカを入れて提供しても問題ないかといったかなり小規模(関西を背負っている私たちには大問題)なものでしたが、尊重と譲歩の折衝は国同士の大きな問題についてもいえるのではないかと思います。互いに歩み寄れば、タコとイカをミックスして量を稼ぐといった意外な解決策も時には生まれるかもしれません。これが意外と美味しいのです。

写真写真を拡大夜のソーラン節特訓

私は2019年9月より北京の日本大使館で幸いにも働く機会を得ました。いまは仕事で中国人と接する機会も多いですが、やはり常に対話を意識しています。こちらが相手を尊重すれば、向こうもこちらを大事にしてくれます。互いに譲歩できず上手くいかないこともありますが、それぞれ守っているものが異なるので、それは当然起こりうることです。相手を知ることと同じくらい、自分を知ってもらう努力が大切だと学びました。いつでも国のトップが手を握れる関係であり続けることは、これからの日中関係で変わらず求められることだと思います。私個人として日本と中国のために何ができるのかは模索中ですが、私たち【関西時代】が大学生交流で行ったように、一緒にソーラン節を踊り、タコ焼きを食べ、浴衣を着てゲームをし、ゆっくりお茶をするといった交流が、日本人と中国人の心を繋ぐ一助になるのは間違いないと思います。私は交流事業を通してタコとイカが同じ生地の中で仲良く共存出来ることを実証しました。タコとイカにできたことが私たちにできないはずがありません。海で隔てられた日本と中国ですが、互いの手は常に握れる距離にあります。問題があれば一緒に解決し、共に発展していく未来への道標は私たち若い世代の手中にこそあると思います。

写真写真を拡大イベント本番。タコ焼き提供の様子

最後に、担当の諸田さん、【関西時代】メンバーとカウンターパートのみんな、イベントに来てくれた来場者の皆さん、本当にありがとうございました。

2021年5月9日
近畿大学
徳永 潤

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