Interviewインタビュー 「心連心:中国高校生長期招へい事業」第17期生 帰国前報告会とレセプションレポート【前編】
Vol.83 異文化の歩み寄りから得る気づき
2026年7月16日、「心連心:中国高校生長期招へい事業」第17期生たちの留学プログラムを締めくくる、帰国前報告会及びレセプションが東京の都市センターホテルで開催されました。中国人留学生たちが日本で感じたこと、学んだこと、そして本プログラムを支える人びとの思いを紹介します。
特別な留学生から普通の高校生へ ~李芊成さん
四川省出身の李芊成さんは北海道の立命館慶祥高校で11か月を過ごした。留学生活が始まった9月は毎日精いっぱいで、緊張と孤独感の連続だったという。それが秋の深まる11月ごろから少しずつ変化してきたそうだ。「留学生ということを意識しすぎず、普通の生活だと考えて、周囲の人からも特別扱いされず、普通に接してもらうのがよいと思うようになりました。すると孤独感が薄れてきたんです。今写真を見直すと、このころから一人ではなく誰かと一緒に写ったものが増えてきました。昼休みにサッカーをするようになったのも変化のきっかけの一つかもしれません」。
この日は、立命館慶祥高校のクラスメートで、年末年始にホストファミリーになってくれた鈴木さんも駆けつけてくれた。「初詣に行ったり、おせち料理を一緒に食べたりしたのがよい思い出です。僕がだらしなくて朝寝坊なので、李くんは僕の弟たちと遊んだりしてくれました」と楽しそうに振り返る鈴木さん。この高校では進学準備のために部活動に参加する生徒は少ないという。その代わり、李さんも鈴木さんも学校の自習室で勉強をしながら友達と雑談をした時間が楽しかったようだ。
李さんは日本の大学進学のため、近いうちに日本に戻ってくることを計画していると言う。「父も日本に留学した経験があり、昔から日本の話をよく聞いて育ったので、日本で進学するのは当たり前のような雰囲気があったんです」。留学当初は日本語に苦労したが、言葉に慣れれば友達との交流も違和感なく、ごく自然にできたという。「中国の高校生も日本の高校生も話す内容は同じようなことですし、笑うのも同じようなことです。日本の高校生のほうが将来や夢についてもっとしっかり考えているような気もしますが」と笑う李さん。そんな李さんと鈴木さんは「大学に進学したら物理学を学びたいな」「僕は数学科に進みたい」「どの大学に進学したい?」などとおしゃべりが止まらず、その様子は国籍の違いを忘れさせる普通の同級生同士のものだった。
日本を見つめ直したホストファミリー体験 ~下村さんご一家
河南省から大阪府に留学した趙家鈺さんは3つのホストファミリー宅にステイした。そのうちの一家庭、下村さんはホスト経験が初めてだったそうだ。「中国語はもちろん英語も怪しいし、不安はありましたよ。でも言葉の問題は全くなくて、こちらは何も考えず普通に話しても大丈夫でした。我が家は子どもたちがずいぶん前に社会人になっているので、高校生がうちにいることが新鮮で、とてもよい経験をさせてもらいました。大晦日には一緒に紅白歌合戦を見たんですけど、家族そろって見るなんてものすごく久しぶりでしたよ! うちの近くにある今城塚古墳に行ったときは、彼女の出身地の洛陽(中国の四大古都の一つ)の話をしながら興味を示してくれてね。大阪城や奈良の大仏殿にも久しぶりに行ったなあ。奈良のならまちには趙さんのおかげで初めて行きました」。
趙さんはゴールデンウィークに訪れた高槻市のジャズストリートもお気に入りだったようだ。下村さん曰く「人が多いし、僕たちだけではわざわざ行こうと思わないけれど、趙さんがいるから思い切って行ってみました。そうしたら、昔の知り合いが出演していてびっくりしました」。趙さんのステイをきっかけに下村さん一家も日本の伝統文化を振り返ったり、行動範囲が広がったりして、貴重な経験になったようだ。
盛りだくさんの11か月を過ごした様子の趙さんに心残りはあるかと尋ねると、「メイドカフェに行ってみたかった~」とのこと。するとすかさず下村さんが「(メイドカフェのある)秋葉原で買ったキティちゃんのお土産あげるわ~」と包みを取り出し、趙さんが笑顔になる場面も。下村さんご一家と趙さんの絆を感じる心温まるひとときだった。
居心地の悪さの中でこそ成長する ~楊思涵さん
長崎県活水高校に留学した楊思涵さんは心連心で経験したことを招へい生代表としてスピーチで語ってくれた。
「この一年で私が何よりも学んだこと、それは『居心地の悪さの中でこそ、人は成長する』ということです。最初は言葉が通じず、習慣も違いました。しかし、その不安から逃げずに、その渦中に飛び込んでみることで、少しずつ新しい自分が開かれていくのを感じました。最初はうまく届かなかった言葉も、何度も紡ぎ直すうちに、相手の心に届くようになりました。その積み重ねが、私を成長させてくれました。
このプログラムが私に授けてくれたものは、語学力や異文化理解をはるかに超えています。それは、異なる価値観の中で自分の軸を持ち続ける強さであり、相手を敬いながらも自分の言葉で想いを語る誠実さであり、そして何よりも、異なるもの同士が互いに歩み寄ることの尊さへの気づきです。
中国と日本は、永遠の隣人です。これからも両国の若者が対話を重ね、互いの心に耳を澄ませ続けること。その営みこそが、未来の友好を育む確かな土壌となるでしょう。私たち一人ひとりは、大海の中の一つの波かもしれません。しかし、その波が寄り添い、重なり合い、やがて大きなうねりとなる。先輩方が積み上げてこられた『心連心』の想いを、私たちは次の世代へと手渡していきたい。その鎖が、いつか大きな輪となり、未来の日中関係をより温かく、より豊かなものにしていく——その日を夢見て、私は明日へと進みます」。
楊さんの言葉からは、心連心プログラムが単なる交流事業ではなく、人と人とが心を通わせ、互いを理解し合いながら未来を築いていく場であることが強く伝わってきた。国や文化の違いを越えて育まれた友情と信頼は、これからの日中友好を支える大きな力となるだろう。異国の地での挑戦を通して成長した楊さん。そのまなざしの先には、自身の経験を次の世代へとつなげていきたいという強い思いがあった。参加した若者たちがそれぞれの場所で新たな一歩を踏み出し、「心連心」の輪がさらに広がっていくことを期待したい。
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